診療所を辞す時に、キヨがこの白い紫陽花を一枝切って持たせてくれた。流石に遠慮をしたのは、仮にも腰に二本差すこの身で、花を手に往来を歩くことに、いささかの抵抗があったからだ。
そんな総司の憂慮をものともせずに、
キヨは花の付き方の良い一枝を選んで切って総司に手渡すと、
「ほんま、沖田はんによう似合いはる花やわ」
真から満足そうに頷いた。

その横で、田坂が笑いを堪えていた。



                        『露となりしも・・』より








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