カルタでシアワセ♪ (した)
「それじゃ山崎さん、貴方この句をどう思います?」
伊東さんは島田さんの口から真実を引き出すのは無理と承知すると、すぐに矛先を山崎さんに向けました。
他人の不幸は明日の我が身・・・
山崎さんは思います。
冷静沈着、常に鋭利な判断と行動で、何事にも動ぜず、数々の困難を乗り越えて来た自分でした。
けれど遂にその看板も下ろさねばならぬ時が来たと、山崎さんの頭の中を、過去の栄光がくるくると走馬灯のように回ります。
いえ、例えどんな事実を突きつけられようと、動かざること山の如しの心で全てを乗り越えなければなりません。
それが生涯一監察人山崎烝の、男の矜持です。
山崎さんは静かに瞑っていた瞼を開けました。
「ほら、これ」
差し出された札にあったのは、『水の北山の南や春の月』という、あんまり良く分からない句でした。
山崎さんは暫く瞑想するように、目を半開きにしていましたが、少しのち厳かに口を開きました。
「これは・・・」
「これは?」
期待で震える総ちゃんの声が、山崎さんの耳に木霊します。
世の中に邪気無き者の直截な問い掛け程、残酷なものは無いのかもしれないと、八郎さんはふとそんな風に物思いに耽ってみました。
まだ先程の衝撃から立ち直りきれない島田さんは、同僚の呻吟する姿に思わず目を背けました。
「これは、ある地点を句に託して正確に詠んだものです。水とは川、若しくは池、その真北にあり、更に山はかの位置から真南にある。もしも西北、東北など、僅かにでもずれているならば、副長は必ず『哉(かな)』などとつけ曖昧にする筈です。一見大雑把に捉えていそうに見えて、その実一定の場所を寸分の違いもなく表した、すでに唸るしかない観察眼です」
山崎さんは顔の表情ひとつ変えず、伊東さんに鋭い視線を向けたまま、息を継ぐ間も無く一気に語り終えました。
山崎烝、忠義の為ならば、己を偽り続ける生涯に、最早何の悔いもありません。
そんな山崎さんを見る総ちゃんの大きく瞠った瞳に、潤むものがあります。
八郎さんは『山崎さんの詭弁こそ唸るしかない』とは、言葉にせぬのが武士の情けと、扇子を開きひとり横を向いて扇ぎ始めました。
島田さんはとりあえず、同僚のしくじりが無かった事に、ほっと胸を撫で下ろしました。
玄海僧正さんは、『そないに難しいもんと違うんとちゃうやろか?』と思いましたが、目の前の総ちゃんがそっと涙を手の甲で拭う姿がいじらしく、そんなことはすぐに忘れて、思わず鼻の奥がツンとして貰い泣きしてしまいそうになりました。
そして伊東さんは何だか知らないけれど、みんなが自分を殺して土方さんを誉める様に、すごく苛々してきました。
『・・・役に立ちそうに無い奴ら』
伊東さんはお腹の中でひとり舌打ちすると、前々から気に入らないもう一人の人物に視線を移しました。
「ねぇ、伊庭さん、それじゃ、貴方こんな句どう思います?」
あくまで門弟さん第一主義、穏やかな伊東道場のお婿さんの顔をして、伊東さんは問いかけました。
「梅の花は一輪でも梅だっていう句だろう?分かりやすくて親切ってもんだろうさ」
八郎さんは伊東さんの手にある札を、ちらりと見ただけで又横を向いてしまいました。
「ふぅん。それが幼少から勉学に勤しみ、漢籍も修めた貴方のご意見ですか?」
伊東さんはとてももったいぶった口調で、嫌味を言いました。
八郎さんはそれを聞くと、扇いでいた手をぱたと止め、何か思案気に少しの間動かずにいましたが、やがてゆっくりと伊東さんに向き直りました。
伊庭八郎、売られた喧嘩はきっちり買って、今の処負けなし人生を歩んでいる男です。
ちなみに土方さんには、こっちが売っている喧嘩で勝算はたっぷり有りと、八郎さんは余裕で信じ込んでいます。
「それじゃ聞くが、『行く春を近江の人とおしみける』と、『梅の花一輪咲いても梅は梅』のこの両者、一体どう違う?」
思いもかけぬ反撃の問い掛けに、一瞬怯んで咄嗟に返事ができないのは伊東さんでした。
「別に近江の人と惜しまなくても春は勝手にゆくぜ。たまたま居たのが近江の奴ってことだろう?まして季節は夏でも良かったんだぜ。春ばかり贔屓されちゃあ後に来る夏が気が悪いだろうよ。それでも後の世の人間は褒めちぎった。つまり俳句なんざその場限りの、そのまんまで良いってことさ。所詮梅はどこまで行っても梅止まり、二輪咲いて桜になれば話は別だがな。なまじ余計な飾りつけるより、いっそ簡単すぎる位が丁度いいって事だろうよ」
立て板に水の如く淀みなく解説される弁に心酔するかのように、総ちゃんはうっとりと八郎さんを眺めています。
「だろ?」
その総ちゃんに向かって、八郎さんはにっこりと微笑みました。
瞳を滲ませて頷く総ちゃんに、でも八郎さんは、『そんな訳で俳句はひとつ間違えれば名句か川柳かの二者択一になる』、とは言いませんでした。
それぞれ方向性は違うけれど、とりあえずシアワセそうな二人を見る伊東さんは、唇の端がわなわなと震えて来るのが分かりました。
「・・・それじゃお伺いしますが、この梅の句はかの名句と並べられる程に素晴らしいものだと言われるのですね?」
伊東さんはからからの声で、漸く八郎さんに逆襲の刃を向けました。
「好きに並べてくれろ」
八郎さんは総ちゃんに笑顔を向けたまま、もうそんな事はどうでも良いと言う風に、伊東さんを見ずに素っ気無く応えました。
興味の欠片も無い句を、どう並べてくれようが伊東さんの勝手です。
恥をかくのが自分でなければ、別段どうってこともありません。
それよりこんな茶番は忠義一徹の奴らに任せて、総ちゃんと何処かへ善哉でも食べに行こうかな・・と既に八郎さんの思考はそっちに飛んでいます。
嫌な事はさらりと忘れる頭の切り替えがなければ、このご時世に気の張る上さまの護衛なんぞやってはいられません。
そんな八郎さんの態度に、伊東さんの苛々は頂点に達しようとしています。
「それなら・・」
「ああ、これやっ!」
伊東さんが八郎さんに何かを言おうとするのを邪魔するように、玄海僧正さんが一枚の札を見て大きな声を上げました。
みんなが一斉にそちらを見ると、玄海僧正さんはさも大切そうにその札を両手に持って高く掲げ、頭を下げています。
「坊さん、いい句でもみつけたのかい?」
いつも表も裏も無い永倉さんが、全然悪気無く聞きました。
玄海僧正さんは『そこいらの坊主と一緒にせんといてや、僧正つう位持ちなんやでっ』と、一瞬とてもむっとしましたが、今はそれどころではありません。
「これですねん。かの有名なお上人さまですら、この句の奥を解き明かせなんだったつうのは・・」
玄海僧正さんは感慨深気に句に見入りました。
言葉を遮られた挙句、とことん自分の存在を無視した失礼な僧正さんの手元を、腹立たしげに伊東さんが覗き込むと、そこには『知れば迷ひ知らねば迷わぬ恋のみち』と書かれた札がありました。
「それの何処が有名な上人さまを唸らせたのです?」
伊東さんはあまりに呆けて、ついらしくも無く、素朴に質問してしまいました。
玄海僧正さんは、『そんなことも分からんのかいな、全く世俗の人間ちゅうのはこれだから嫌や・・』と、坊主にあるまじき事をお腹の中で思いながら、仕方なく伊東さんを振り向きました。
「あんた、この句を読んで何も思わんのかいな?知れば迷う、せやけど知らなければ迷わへん。一見当たり前のようですやろ?」
「一見も二見もそのまんまでしょ?」
伊東さんのこめかみに浮いた血管は、さっきからもうはちきれそうに、ぴくぴく動いています。
玄海僧正さんはそこで伊東さんに人差し指を向けると、ちっちっち、と左右に振りました。
「知らなければ迷わぬと、分かっていながら、知ってしまえば血迷うどうしようもない業の深い道・・これが恋というもんや。古今東西、飽く事無く終わらぬ人の世の哀しい習い性ですがな。この句はそれをたった五七五の文字に見事にうとうてありますのや・・・」
玄海僧正さまは喋っているうちに、総ちゃんを想う自分と重ね合わせてしまい、辛い恋心にふと目頭が熱くなりました。
見れば総ちゃんの白いほっぺたにも、ひと滴(しずく)零れ落ちるものがあります。
『・・・ああ、沖田はんもうちと同いなこと想うてくれはってる』
玄海僧正さまは今とってもとってもシアワセなキモチに包まれて、ぼうっと総ちゃんを見つめ返しました。
「ふぅーん」
その玄海僧正さんのシアワセを鼻先で笑って、ずかずかと土足で踏み込んだのは伊東さんでした。
「なんぞ文句がありますのんかいな」
玄海僧正さんは自分世界を突然邪魔されて、とっても不機嫌に応えました。
「それならば、これはどうなるのです?」
伊東さんは一枚の札を指差しました。
それには『知れば迷ひ知らねば迷わぬ法のみち』と、『恋』を『法』に置き換えただけの句が書かれていました。
「一文字置き換えただけで使いまわしできるような安っぽい恋じゃ、池の鯉の餌にもなりませんね。それもまた陳腐ったらありゃしない」
伊東さんはさも厭わしそうに眉根を寄せました。
「けどよ・・」
そこで伊東さんを見たのは永倉さんでした。
「使いまわしできるってことは、よくあんたが言っている、先を読んで臨機応変柔軟性に富めってことじゃないのか?」
永倉さんは全く悪気無く伊東さんに素朴に質問しました。
「・・・それと、これとは・・」
なまじ裏の無い率直な意見だけに、伊東さんは『おまえはばかかっ!』と怒鳴りつけたいところをぐっと堪えて、こんな質問をする永倉さんを忌々しげに見ました。
「そういやそうだよな。一輪咲いても梅の花、て奴だって、考えてみりゃ『梅』を松でも菊でも勝手に置き換えて、春夏秋冬、好きなように使ってくれって言っているようなもんだよな」
藤堂さんが、さも感心したように顎をなでながら札を見ました。
「土方さんってのは、あれで案外太っ腹なのさ」
扇子をぱちんぱちんと閉じたり開いたりしながら、珍しく八郎さんが土方さんを誉めました。
「そうですがなっ。いやもう、凡人には分からんのは当たり前やろけど、この句の一番の素晴らしさは一文字替えるだけで、如何様にもその道の条理を説く、という処にありますのや」
玄海僧正さんがみなの意見に後押しされるように、声高に言いました。
玄海僧正さんは伊東さんを見て、『だから芸の無い奴に説法するのは骨が折れる』と云わんばかりに、ふりふりと頭を振りました。
それをおもむろに感じ取って、今度は笑っている筈の伊東さんのお顔全体が、ひくひくと小刻みに動きました。
「あんなぁ、この最後の一文字を例えば『門徒』に変えてみなはれ。知れば迷ひ、知らねば迷わぬ門徒の道・・・・みんな知って迷って仏様の慈悲に縋りなはれ・・そう言ってますのや、この句は」
しみじみ語る玄海僧正さんの声を聞いていた伊東さんは、何だか化け物達を相手にしているような錯覚の中に今います。
みんなの顔をゆっくりと見回すと、山崎さんは瞑想に入り込んでいるようにまたまた目を半開きにしています。
実は山崎さんはお腹の中で、『恋のみち』を『滅私奉公』に置き換えて、改めて厳しく己を律していたのです。
例えこの先土方さんからどのような句を突きつけられようと、決して動揺の欠片も見せまいと誓い、長く険しい道を歩むであろう己の覚悟を胸に刻みました。
そしてやはり島田さんも、『忠義のみち』に置き換えて、己の進むべき茨の道を見据え、それに負けまいと強く頷きました。
そんな二人を見て、伊東さんはもしかしたら此処にいる人間たちは自分の理解の範疇をとっくに超えた、すでに人であって人でないのかもしれないと、そう思えてきます。
もう頭痛を通り越して眩暈すら覚えています。
新撰組は・・・・
自分にとって、居てはいけないところなのかもしれません。
こんな所にいたら、いずれ世間様から後ろ指を指される人格の持ち主になってしまうでしょう。
そうなればもう江戸に帰っても、お婿さんの立場すら危うくなります。
伊東さんはこの時、新撰組を脱っしなければならないと、堅く心に決めたのです。
「あんたはんもそないに強張ったお顔するには、何か苦しいことあるんやろ?遠慮することはあらへん。いつでも相談に来なはれ。仏の道は万人に公平です」
こめかみに指を当てて苦悩している伊東さんに、玄海僧正さんはあたかも徳の高そうな営業用の笑みを向けました。
みんなのやり取りの一部始終を瞬きもせずに見ていた総ちゃんは、もしかしたら自分の土方さんは、神さま級の尊い人なのかもしれないと思います。
いえ、きっとそうに違いありません。
すると両方の大きな瞳から、零れ落ちるものが幾つもあります。
「お前は何をそんなに哀しんでいるのだえ?」
八郎さんはここぞとばかりに、総ちゃんを慰める振りをして肩を抱き寄せました。
「・・・あのね、・・土方さんが何だかとっても立派に思えて・・」
総ちゃんは流れるものを拭おうともせず、すこし震える声で八郎さんに応えました。
「そうだな。この句を見た人間ならば誰でも、少しは自分の才に自惚れることができるだろうよ。己の恥じを晒して、人に徳を与えるってのは滅多やたらにできるもんじゃないだろうさ」
八郎さんは感動のあまりうっとりと土方カルタを見つめたまま、もう何も耳に届かないような総ちゃんに優しく語り掛けました。
「そうだ」
総ちゃんに諭しながら、八郎さんは突然思いついたように声を上げました。
「伊東さん、あんたこのカルタ、寺に奉納してやりなよ」
土方さんに関するその言葉だけは聞えたのか、総ちゃんもやっと顔を上げました。
「どうせもう要らないんだろう?それだったら世話になっている西本願寺に寄贈して、仏像の横にでも安置してやれば、きっと門徒衆も喜ぶぜ」
「そりゃ、ええ考えやっ!」
玄海僧正さんは、ぽん、と膝を叩いて頷きました。
嘗て一休上人さますら唸ったというこの句、カルタの装丁もきんきらきんで、金色(こんじき)の仏像に勝るとも劣らない派手さです。
ここでひとつ自力で寺宝を増やせば、自分の立場も更に安泰というものです。
この分では大僧正の位に辿り着くのも目の前です。
玄海僧正さんは大乗り気で膝を進めました。
「そうさなぁ・・・坊主達には世話になっていることだし・・。今度は新しい屯所も造ってくれるっていう話だろ?伊東さん、あんたここはひとつお大尽になってやりなよ」
義理堅い永倉さんが、さもそれが良いという風に、口を挟みました。
山崎さんと島田さんは、とりあえず屯所からこのカルタが無くなることが先決だと、やはり伊東さんを見ました。
なんて素敵な八郎さんの提案なのでしょう。
本堂の仏像さまのお隣に安置される土方さんの句の書いたカルタ。
きっと後世まで沢山の人たちに、拝まれ、ありがたがられるに違いありません。
その光景を思い描いただけで、総ちゃんはもう天まで昇る気持ちです。
「八郎さんっ」
総ちゃんは思わず八郎さんの袖を掴みました。
「なんだえ?」
八郎さんは余裕の笑みを浮かべました。
「仏像さまの横に置かれたカルタを見たいです・・」
総ちゃんはあんまり必死で、またまた瞳がうるうるしています。
「沖田はん、安心しなはれ。おカルタさまは、きっとみなさんの目に触れるようにならはって、のちのちの世までありがたく拝まれます。なぁ伊東はん?」
玄海僧正さんは『土方カルタ』をすでに仏さまと同じ位置に置いて、慈悲深く穏やかな眼差しを伊東さんに向けました。
総ちゃんの縋るような泣き濡れた瞳を始めとして、其処にいる全部の人間に、そうしなければいけないように見つめられて、流石の伊東さんも頷かざるを得ませんでした。
尤も伊東さんは『こんなカルタ、もう金輪際手元に置いておくなんて御免ですっ』とお腹で毒づいていたので、恩を売りながら手放すのも悪くない相談かもしれない・・・と、抜け目なく思いました。
「いいでしょう。このカルタ、本願寺さんに差し上げます」
伊東さんは、およそつっけんどんに言いました。
「おおきに。伊東はんの功徳、仏はんもきっと誉めてくれはります」
玄海僧正さんは、それはそれは重々しい言葉の割りには、頭はちょっとだけ下げました。
総ちゃんは潤む瞳で、もう一度畳に広げられた土方カルタを見ました。
ここに又土方歳三の名が歴史に刻まれるのです。
涙のせいで金の縁取りが滲んで、札全体が金色に輝いているように見えます。
「そやっ!明日門徒衆を集めて、本堂で十年に一回しか拝めない仏像さんのご開帳がありますのや。そん時に一緒にみなさんに見てもらいまひょ」
玄海僧正さんはそれが得策とばかりに、さも満足げに大きく頷きました。
「それはめでてぇな。それじゃ俺も巡察帰りにみんなを連れてちょっと寄ってみよう」
部下を大切にする永倉さんらしい気配りです。
ついでに『お前もそうするだろ?』と、藤堂さんを見ました。
藤堂さんはどうでもいいと思いましたが、誘われて嫌と言えない性格が邪魔して思わず頷いてしまいました。
「島田さん、あんたもみんなに教えてやったらどうだい?新撰組みたいな商売をやっていると仏の加護に縋りたい奴等も中にはいるだろうよ」
八郎さんは少し声を落として、それがさも功徳になると言う風に、とても厳かな声で言いました。
総ちゃんはその横で、ぽろぽろと綺麗なものを零しながら、もう頷く事しかできません。
島田さんは、さっき『例え茨の道でも忠義を貫き通す』と堅く誓ったのに、すぐに後悔している自分をお腹の中で叱りました。
総ちゃんは思います。
仏像の横に燦然と輝くカルタを見たら、みんなきっと土方さんを今よりもっとすごいと思うに違いありません。
そんな人々の感嘆の溜息と称賛の声が、瞳を閉じれば耳に幾重にも聞えてきます。
近藤先生にお願いして、明日はお休みを貰って、夜が明けないうちに本堂に行って、一日中柱の影から様子を伺わなければなりません。
総ちゃんはそっと中庭に瞳を向けました。
もしかしたらあまり興奮しすぎて、帰って来た土方さんに上手に話すことが出来ないかもしれません。
そしてそれを聞い土方さんは、どんな顔をして喜ぶのでしょう・・・
考えただけでも胸が高鳴ってどきどきしてしまいます。
お天道さまは西に傾き始めています。
そして全部沈んで又お顔を出す頃には・・・・
ああ、きっと今夜は眠ることなどできはしないでしょう。
本当に、何て素敵な御開帳なのでしょう。
空を飛ぶ烏の鳴き声も、土方さんと総ちゃんの明日を祝福してくれているようです。
今最高にシアワセな中で、総ちゃんは金色に染まりつつある空を、滲む視界の中で、いつまでもいつまでもうっとりと見つめていました。
おあとがよろしいようで♪・・・とほほ
瑠璃の文庫
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