偽曲 北座の怪人 (八ノ幕) 時に激しく、時に静かに舞いながら、余計なものをすべからく削ぎ取った動きは、あまりに清冽すぎ、見ている者の心を現と切り離し、一種独特の陶酔へといざなう。 だがこの感覚は、一心に舞い続ける宗次郎を眼(まなこ)に映す八郎にとっては、懐かしいものだった。 過ぎた昔――。 宗次郎と竹刀を合わせる寸座、身の内の神経が極限まで張り詰められるような緊迫感を、八郎は、今も四肢の先にまで蘇らせる事が出来る。 見詰める舞には、あの時と同じ、水澄むような潔さがあった。 「宗次郎の一場は、台詞も無く、舞う事だけで、ひとつの芝居を完成させようとした試みです。・・・能に似ていますが、あれ程様式美にこだわら無い変わりに、もっと土臭く、そして鋭く、人の心に訴えかけようとしています。その分、舞う者の力量をも問われる」 背後から近づいて来る人の気配は察していたが、敢えて振り返らず、舞台を凝視していた八郎の傍らまで来た佐瀬圭吾の双眸は、やはり宗次郎の姿に向けられた。 「この本は、あんたも手伝ったのかえ?」 「どんでもありません、私の如き者に、あのような本は書けません」 互いに前を見据えたまま交わす会話は、静謐の中、吐く息だけに声を潜ませる。 「では、土方か・・」 「そうです、あの方が書かれました。・・宗次郎にとって最初の、そしてあの方にとって、最後の本です」 呟いた声は小さなものだったが、それを己自身に云い聞かせるかのように、宗次郎を見る圭吾の双眸が緩やかに細められた。 「今回の舞は面をつけ、素の顔を見せません。衣装も唐織で、金地に雪待南天を刺繍した、これだけは、能の形を借りたものを用います」 「宗次郎じゃ、上物の重さに負けちまいそうだな」 「そうかもしれません」 舞台の一点を見詰めたまま応えた声が、衒わぬ笑いを含んだ。 だがその余韻を素早く仕舞うと、次に待ち構える重い核に踏み出すかのように、圭吾の面が硬く引き締まった。 「衣装の絢爛さは、本来あの舞にはそぐわない。けれどどうしてもそうしなければならない理由があるのです」 「それは観ている者に、必要以上に強い印象を与える為かえ」 「そうです、あの一場の幕が引かれるや、もうひとり、同じ面、同じ衣装をつけた者が舞台裏に現れます」 「それが、あんたか」 「ただ立ち、歩く位ならば、あの舞台裏の暗さです。私のように動きの鈍い者にも、少しの間なら、敵の目を欺く事ができるでしょう」 八郎の視線を受けた横顔に、苦い笑いが浮かんだ。 が、それは直ぐに消え、宗次郎の姿を見詰めていた眸が、舞台から離れる事を惜しむように、ゆっくりと八郎に向けられた。 「宗次郎を、頼みます」 無言の八郎を見る双眸には、揺るがぬ強さ、否と応えるを許さぬ鋭さが、隠す事無く湛えられていた。 それは常にもの静かなこの若者が、一瞬だけ垣間見せた、激しい感情の迸りでもあった。 「あんたは、それでいいのかえ」 しかしぶつけられた激情は、八郎の胸の裡を荒波立たせる。 その逆巻く悋気のままに問う声が、無情ないらえを強いる。 「五年、宗次郎の傍らにいました。護ると定められた者を、いつから愛しいと想うようになったのか・・、何処からが境目だったのか・・、そんな事は、疾うに忘れてしまいました。ただ気付いた時は、私にとって宗次郎は、決して離したく無い存在になっていました。例え宗次郎の心が他にあっても、そんな事は構わなかった。私は宗次郎の傍らにあり、宗次郎は私の傍らにありさえすれば、それで良かった」 己の恋情を吐露する調子は淡々と、少しの乱れも無い。 だが其れこそが、身を挺して愛しい者を護ると決めた、圭吾の、宗次郎への想いの丈を物語っていた。 「今回のこの策を、私達は既に甲子太郎に匂わせてあります。西面の武士達は、間違いなく初日を狙い、襲撃を仕掛けて来るでしょう。ですが私達はそれを迎え撃ち、必ず相手を滅ぼします。これ以上、敵に宗次郎を追わせる事を許しません」 強い調子で云い終えた寸座、何かを断ち切るかのような笑みが、圭吾の面に浮かんだ。 「どうか、宗次郎を頼みます」 深く下げられた頭(こうべ)に、八郎は目礼だけを返した。 時をかけて上げられた双眸は、今一度宗次郎に向けられたが、しかしすぐに圭吾は踵を返すと、もう二度と振り返ることはせず、舞台の袖に消えた。 そして去り行く者の足音が遠くなるのを背中で聞きながら、八郎は、独り舞う宗次郎の姿を身じろぎもせず見詰めていた。 暫し、来し方の感傷に触れ、新たに託された行く末を、宗次郎の舞姿に重ねていた八郎だったが、その双眸が、不意に険しく細められた。 そして時を同じくして、八郎と圭吾の存在を承知していながら、尚舞うことをやめようとしなかった宗次郎の動きも止まった。 「大層、熱心な事だね」 舞台の上手から歩み来る主は、白皙に皮肉な笑みを浮かべ、嬲るような視線で宗次郎を見る。 「流石は、座長が秘蔵とするだけの事はある。見事な舞だったよ、宗次郎。なるほど、これでは私など及びもつかない」 直ぐ手前で威圧するように立ち止った甲子太郎を、宗次郎は息を詰めて見る。 「何もそんなに怖い顔をする事は無かろう、とって喰うと云っている訳じゃなんだ。ただ私もお前のお披露目に、気持ちばかりの祝いをしたいと思ってね」 「甲子太郎さん・・・」 「舞が仕舞いになる直前、そう、哀れな女の御霊(みたま)が漸く真実を知り、花となり浄土へ旅立つと云う場面だが、其処に、仏師として登場させて貰う」 驚愕に瞳を見開いた宗次郎に、甲子太郎は、口角だけを上げて笑った。 「私もこの座の役者、近藤座は甲子太郎で持つと云われるからには、歳若の者に一幕取られた位、歯牙にもかけぬ懐の深いところを客に見せなければならないのは、お前とて分かってくれるだろう?が、共に舞台を踏めば、甲子太郎には、新しい役者の晴れ舞台を祝ってやる程には度量があると、世間は噂してくれる。つまらぬ矜持とお前は笑うだろうが、そこの処は辛抱しておくれ」 強引そのものの申し出が、近藤の弄(ろう)した策の邪魔をし、逃げ道を塞ごうと意図しているのは明白だった。 だが射竦めるような冷淡な眸は、宗次郎から言葉を奪う。 「花形役者は、押しの強さが違うねぇ」 しかしその重い気を、あからさまな侮蔑を孕んだ平たい声が、背後から無遠慮に破った。 「華と押し、共に譲れぬ、役者の命ですからね」 が、それに応えた声も又、少しも動じる事は無い。 「おたくさんは、確か、伊庭さんとか云ったか・・・。あんな事になってしまったが、お仕打ちの桝屋さんが、宗次郎に良い客がついたとしきりに喜んでいた。この子はこれから座を背負っていく大事な逸材、私からも是非ご贔屓にと、お願いしますよ」 「流石、甲子太郎、良い引き際だ」 「八郎さんっ」 困惑が過ぎて大きくなった声など、とんと気にかける風も無く、八郎は甲子太郎に向け、薄い笑みを浮かべた。 「生憎と無粋な江戸者。嘘を上手のひとつで繕えもせず、堪忍してくれろ」 「いえ極上の褒め言葉と、頂戴しますよ」 「ならばありがたい」 互いに一歩も譲らぬ遣り取りは、言葉の上面だけで終わらぬ、挑発そのものだった。 「他人の逢瀬をこれ以上邪魔するのは、江戸では無粋と云うのでしょうね」 「その辺りも、ちゃんと分かっているらしい」 「大事な贔屓筋を怒らせたとあっては、この甲子太郎、お仕打ちにも、座頭にも、いや、何より、宗次郎に申し訳が立たない」 大仰に笑う乾いた声が、頑なに沈黙から踏み出す事をしない面輪に向けられた。 「そう云う訳だ、宗次郎。明日を楽しみにしているよ」 語尾に、まだ笑いの余韻を残しながら、しかし宗次郎を見る甲子太郎の目は、もう非情な程に冷淡なそれに変わっていた。 「この二年、お前の一挙手一投足は、常にあいつの監視下にあった訳か・・」 己の存在を誇示するかのように、殊更ゆっくりとした足取りで去って行く背に、八郎はちらりと視線を流したが、すぐにそれを宗次郎へ移した。 だが宗次郎は、その宿敵の姿を、瞬きもせずに凝視している。 が、やがてそれも幕の間に隠れてしまうと、漸く傍らの八郎を見上げた。 「奴らも、焦っているらしいな」 「近藤先生達は、そこを狙ったのです」 つと瞳を伏せた仕草には、先に打ち明けられた策を、未だ是と頷けぬ強い抗いがあった。 「そしてお前は、いつまでも、そうして駄々をこね続けるのかえ?」 「駄々など、こねてはいない」 揶揄するような笑いに、宗次郎も瞳を上げたが、そこには、あの時近藤に見せたような、激しい焦燥と苛立ちの影はもう無かった。 しかしその刹那、まるで闇を掠める火のような鋭い感覚が、八郎の裡を走った。 それは不快とも怒りとも違う、酷く落ち着かなくさせる、強いて言葉にすれば、不安と云う二文字が一番近い感情だった。 だが八郎は、己を弱気に傾けるそれを即座に打ち捨てると、宗次郎に視線を戻した。 「お前の場の幕が引かれたその時、甲子太郎と西面の武士達も一斉に反撃に出るだろう。だが俺は何があっても、お前を江戸に連れ帰る」 確乎不抜と云い切る八郎の脳裏に、宗次郎を頼むと頭を下げた圭吾の姿が過ぎる。 そしてもうひとり。 己の書く最後の本を、愛しい者を救うが為の幕とした男の姿が蘇る。 好いていると――。 魂魄を振り絞るかのような声にすら、僅かにも動じなかった背は、しかしそれが土方にとって、己を制する唯一の砦だったのだと、八郎の目は耳は心は、決して騙されはしなかった。 そして愛しいと、咆哮にも似た声無き土方の叫びは、宗次郎にも伝わっていた。 だからこそ、土方の想いを確かめる事が出来たからこそ、好いていると、宗次郎は二度言葉にしたのだ。 一度目は宗次郎自身の心の吐露、そして二度目は、土方の想いに応えて。 だがそれは、宗次郎の決めたひとつの覚悟をも物語っていた。 宗次郎は我が身ひとつで、この長い戦に仕舞いを告げようとしている。 それが限られた命脈と引き換えに出来る、この世に生きた唯一の証として。 が、自分はその決意を許しはしない。 宗次郎の切なる希(のぞみ)を、果たさせはしない。 迸る想いを、今は握る掌に封じて、八郎は宗次郎を見詰めた。 「お前を連れて帰る、どんな事をしても、な」 「八郎さん・・」 語りかけるようにゆっくりと告げて踵を返しかけた背を、静かな声が止めた。 「初めて八郎さんと手合わせをした時、私は怖かった」 不意に何を話し始めたのか・・、訝しげに細められた眸の中で、宗次郎の面輪が邪気の無い笑みを湛えた。 「それまで父を相手にしかした事が無かったし、それに八郎さんは怖い顔をしていた」 「この男前がかえ?」 頷く宗次郎は、まだ笑みを消さない。 「何故私などと手合わせをしなければならないのかと、それがとても不満そうだった」 「生意気な時代だったさ」 「けれど八郎さんも途中から本気になってくれて、私も無我夢中で・・・、気がついた時には、終わっていた」 「俺はお前に一本取られて、負けた」 「嘘ばかりを云う」 近い昔を語る声は、懐かしげな笑いを含む。 「あの時八郎さんは、取れる筈の一本を取らずに竹刀を仕舞った。力を使い果たした私から、一本取るのを潔しとしなかった」 「俺にも、矜持があったと云う事だろうさ」 「違う」 短い言葉で抗った寸座、柔らかな調子が消え、面輪からも笑みが引いた。 「あれは、八郎さんの優しさだった」 「つまらん感傷だ」 「八郎さんはいつも優しかった」 「どうした、ずいぶんと殊勝な事だな」 「ありがとう。・・そう云おうと思っていたのに、ずっと云えなかった」 「俺はお前を江戸に連れて帰るよ」 かわす言の葉は、ふたつの心そのもののように、何処までいっても交わる事が無い。 だがその八郎の胸の裡に、つい先程切り捨てた筈の、抉るように切なく、そして重い感情が再び渦巻く。 もしかしたら。 もしかしたら自分は、宗次郎に授けられた天命を、砕く事が出来無いのではないのかと。 そして堪えようの無い程に胸を騒がせるこの正体は、自分自身、心の何処かで、既にその事を承知しているが故の焦りなのではないのかと――。 「・・ありがとう」 其処まで思った時、再び耳に触れた小さな声が、残りの韻を追う間も無く空(くう)にとけた。 だが其れには応えず、八郎は無言のまま踵を返した。 宗次郎の視線を背中で感じながら、八郎は振り向かない。 江戸に連れ帰ると決めた信念も、己が腕にいだくと揺るがぬ決意も、振り向いた途端、其処で全てが終(つい)を迎えてしまいそうな予感に怯える無様には、自嘲の笑みさえ浮かぶ。 だがそれでも良かった。 宗次郎をこの手に出来るのならば、過去を遡り、あの時のように、再び己の傍らに宗次郎が在る日を取り戻す事が出来るのならば、どんな侮りを受けようが構うことは無かった。 宗次郎の身を縛る因果を断ち切るのは、自分でなければならなかった。 ――踏み締める古い板敷きが、時折、悲鳴のような乾いた音を立てる。 それすら意識の外に置いて歩みを進める八郎の視線の先には、まだ見ぬ泡沫(うたかた)の一場が、今しも幕を上げようとしていた。 初日を明日に控えての、夜。 一種異様な昂ぶりを呈している舞台裏の喧騒の中、例え一幕を担うとは云え、宗次郎も、小道具の準備やら、目上の者の衣装の手入れの手伝いやらに、足を止まる暇(いとま)も無い。 「宗次郎」 が、その動きを無理矢理遮る声が、宗次郎を振り向かせた。 「田坂さん・・」 既に夜更け、時は子の刻を回っていた。 急な病人でもない限り、こんな時刻に田坂が小屋に来るのは珍しい。 「これを持って来た。今日の宵になって、漸く馴染みの薬問屋に届いた薬だが、咳は抑える。強い分、逆の作用も案じられるが、日を限り、その後養生に入れば、身体への負担も少なくて済む」 あまり乗り気では無さそうに告げる若い医師を見上げた瞳が、驚きに見張られた。 「どうした?」 「田坂さんが、こんな風に助けてくれるとは思わなかった」 つい零れた正直に、精悍さを宿した端正な造りの顔が、苦く笑った。 「俺は意地の悪い医者だからな」 「・・いつも怒られてばかりいるから、びっくりした」 油紙に包まれた小さな包みを両の手の平で受け取りながら、宗次郎の面輪にも、つられるような笑みが広がった。 「だが約束は約束だ。これが終わったら、君は座を離れ養生に入る」 「分かっています」 「明日は、客席から観せて貰う」 医師として、そして人として、自分の為に心砕いてくれた田坂俊介と云う人間に、宗次郎は言葉では無く、深く頭(こうべ)を垂れる事で感謝の念を表した。 「・・現(うつつ)の夢幻(ゆめまぼろし)を、暫し、観せて貰うさ」 その限られた束の間の時を愉しむかのように、しかし又、二度と目に触れるに叶わぬ花を惜しみ慈しむかのように、宗次郎を映す田坂の眸が細められた。 芝居小屋は、屋根の一部を空け、そこから入る日の光を頼りにしている。 それゆえ、芝居の幕が開けるのも早い。 気の早い客などは、天道が昇りきらない薄暗いうちから、周囲の茶屋で芝居談義に花を咲かせる。 増して新しい芝居の初日ともなれば、その活気は否が応にも高まる。 「その面ひとつで、舞うのかえ?」 一番真上に来た天道の陽が、明り取りから差込み、太い梁に跳ね、煤(すす)けた鈍い銀光となって、客席に注いでいる その様を見上げていた八郎が、面を手にし、舞台に視線を置いたまま身じろぎしない宗次郎に問うた。 今宗次郎の纏っているものは、能楽の衣装に似せた唐織物で、金地に鮮やかな彩の刺繍を施した、豪奢なものだった。 だが八郎の視線の捉えている面は、その色彩の見事さすら静謐に沈めてしまうかのように、薄闇に、幽玄と浮かぶ。 「・・この面は、若い女の人なのだそうです。この一枚で、好いた人への想いも、その人が来てくれなくなってからの憤りも哀しさも、そして身が滅んだ後も尚、激しい想いから逃れる事の出来ない苦しさも切なさも、・・みな、演じ分ける」 「お前は、その女が愚かだと思うか」 不意に投げかけられた問いに、舞台を見詰めていた瞳が、八郎に向けられた。 「ひとりの男への恋慕に懊悩し、果ては魂魄だけとなっても、激しい想いが仇となり成仏できず、やがて仏師によってその男の死を知らされ、漸く安寧の眠りに陥る・・そんな女の恋情を、愚かと蔑むか」 「愚かだとも、哀れだとも、思いはしない」 そうあるだろうと思った通りに、否と応える声は、凛と強かった。 「それは、のた打ち回る程に苦しんだ永の歳月を経て、想いを成就させ、幸いを得たからか?」 「想いは、成就できなくてもいい」 「ではその果てに、何を望む」 「・・・何も」 八郎を見詰める面輪が、静かな笑みを湛えた。 「何も?」 訝しげな声に、宗次郎は頷くだけで是と返した。 「何も望まない、何も欲しくはない。・・ただこの世に生まれ、人を好いたと云う、その証があればいい。これから舞う女の人も、本当の心はそうだったのだと思う。けれどほんの少しだけ不安が勝ってしまったが為に、好いた相手を待ち続ける呪縛から逃れられなくなってしまった・・」 「だから男がもうこの世にはおらず、それが故に、己の元へ来ることが出来なかったのだと知った魂は、漸く救われたと云う訳か」 「一時は苦しみ嘆いても、この舞の中の女の人は、ずっとひとりの人を想い続けていられる。・・未来永劫変わる事無く」 「其れが、この女の幸いか」 ――切れ長の目と、ふくらみのある頬、それに釣合う、形の良い唇。 八郎は言葉を仕舞うと、今正に、人としての温もりを注がれようとしている木の面と、それを持つ白い指先に視線を落とした。 |