総ちゃんのシアワセ♪1 総ちゃんは吉住さんにイヂメられて左の足と右の手が不自由になりました。 右手が使えないのでお八つはいつも土方さんがお団子を買ってきてくれます。 串にさしてあるので左の手で一人で食べられるからです。(ば◎のひとつ覚えです・・けけけ) 土方さんは鈍なので総ちゃんの気持ちが分かりません。総ちゃんは本当は・・・うひひ。 今日も凝りもせずにお団子を買ってきてくれました。でも総ちゃんには食欲がありません。 そんな時、八郎さんがお見舞いにやってきました。 八郎さんは総ちゃんの横でお団子を食べさせようとしていた土方さんを見ると、ふん、という顔をしました。 土方さんはコイツ・・と思いっきり、早く帰れと顔に出してやりました。 八郎さんは将軍さまから頂戴したという風呂敷包みから細長い包みを取り出しました。 『ほら総司、羊羹を持ってきてやったぜ。これは禁裏御用達、虎印の菓子屋の羊羹だぜ。お、右手が使えないんじゃ俺が食べさせてやる他ないなぁ』と嬉しそうに言いました。 その時ちらりと土方さんを見ることも忘れませんでした。芸の細かい御曹司です。 土方さんは思わず、このやろうっ!というのが顔に出てしまいました。 新撰組副長とエラソウにしていても、総ちゃんの前ではただの我儘亭主です。 二人の間でお布団にくるまりながら、総ちゃんは晒しにぐるぐる巻かれた右手を見てため息をつきました。 それは土方さんは一番好きです。でも八郎さんも大好きです。二人の顔を立てるには、残りのお団子と、つやつや黒光りするお高そうな羊羹を『自力で』食べなくてはなりません。お腹は一杯です。右手は使えません。 総ちゃんは何か悲愴な決心をしたように、やおら身体を起こすと、残ったお団子を全速力で飲み込みました。 そしてそのままの勢いでお団子の串で、てかてか羊羹を刺すと、これも味わう間も無く飲み込みました。 総ちゃんは最後の一切れをごっくんすると、やっと二人に笑いかけました。 土方さんも八郎さんも、あんぐりと固まっています。 総ちゃんは本当はすごくお腹が苦しかったのですが、優しいので二人の顔を立ててやったのです。 まったく苦労するのは昔から出来た女房と相場は決まっているようです。はぁ。 その夜、総ちゃんは食べすぎでお熱が出てしまいました。そんな総ちゃんの部屋へ土方さんがやってきました。 『総司、葛きりを買ってきてやったぞ。これなら串でも食べられないだろう・・俺が食べさせてやらないとな』土方さんはとても嬉しそうでした。 昼間八郎さんから挑発されてどうしても総ちゃんに自分の手で食べさせてやりたかったのです。 総ちゃんはとても辛かったのですが、無理やり笑いました。 『土方さん、ありがとう』でもその声はどこか哀しそうでもありました。 総ちゃんはこの夜一晩中お熱にうなされながら、お団子と、羊羹と、葛きりを持って土方さんと八郎さんが追っかけてくる夢を見つづけました。 おあとがよろしいようで♪ |