総ちゃんのシアワセ♪2



ある日、新撰組にりっぱな菓子箱が届きました。
『誰にだ?』と、手の不自由な総ちゃんにお団子を食べさせていた土方さんが聞くと、
『さぁ?あの・・新撰組気付・豊玉師匠様と大書してありますが・・そのような人間はおりません』
取り次いだ隊士さんはとても不思議そうに首を傾げました。
が、その名を聞いたとたんに土方さんの顔が、思いっきり硬直しました。
総ちゃんはびっくりして土方さんを見上げました。
『誰だっ。こんなもの贈ってきた奴っ』土方さんは隊士さんが青くなる程青筋立てて怒りまくりました。
『俺だよ、俺』中庭から爽やかに現れたのは八郎さんでした。
『いやぁ、昨日は総司が全部羊羹をたべちまったから、あんたの分が無くなってさぞ残念に思ったんじゃないかと思って、今日特別にまた禁裏御用達菓子屋から運ばせてやったぜ』
八郎さんは「禁裏御用達」を少しだけ大きな声で言いました。
『その羊羹開けてみなよ。あんたにいつも世話になっているから特注でつくらせたんだぜ』
土方さんはとっくにアサッテの方を向いてしまったので、総ちゃんが仕方なく不自由な手で紐を解こうとしました。
『総司、可哀想に、そんな手で解かなくても俺が手伝ってやるよ』八郎さんは走って横に来ると、そっと総ちゃんの手に自分のそれを重ねて紐を解き始めました。
もちろん土方さんの存在など『視界外−あうとおぶがんちゅう』です。
それを見た土方さんは『どけっ!俺が開けるっ』と怒鳴って八郎さんを総ちゃんから無理やり引き離しました。
がさごそ箱を開けた途端に、土方さんは固まって動かなくなってしまいました。
総ちゃんが恐る恐る覗き込むと、またもテカテカ黒光りするお高そうな羊羹に
『しれば迷ひ知らねば迷わぬ恋の道』と白く浮きでる文様があったのです。
おまけにその上と下には鶴と亀の絵も・・・
『知っても知らなくても迷うんなら、結局同じってことだろ?さすが豊玉師匠だよな。この句おめでたすぎるぜ』
高らかに笑う御曹司八郎さんの横で、総ちゃんは蒼くなってオロオロしていました。
だって今晩、土方さんはこの憂さ晴らしに・・・・・
きっと明日は起きることができないでしょう。
総ちゃんは、下を向いてそっとため息をつきました。


おあとがよろしいようで♪





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