総ちゃんのシアワセ3♪



総ちゃんは右の手にぐるぐる厚い晒しを巻かれているのでお箸を持つ事ができません。
左の足はもっと厚く巻かれているので歩く事もできません。
お医者さんの田坂さんは『いいかい?右の手も左の足も絶対に動かしてはいけないよ』と、毎日厳しく言いました。
そうしないと歩けなくなるよ、と一言脅かす事も忘れません。
なぜかというと、土方さんがそんな総ちゃんに色々と無理を言うのを知っているからです。
総ちゃんを恋人にした土方さんは早々と『身辺整理』をしてしまったので、総ちゃんがいないととても困るのです。
今更総ちゃんにナイショで女の人の所にゆくわけにも行かないので、ついまだ身体の不自由な総ちゃんに無理をさせてしまうのです。
でも田坂さんは毎日往診に来るので、総ちゃんはとっても恥ずかしい思いをしなくてはなりません。
今日も総ちゃんの白いお肌にくっきりと残る『土方印』を発見した田坂さんは、思いっきり眉根を寄せました。
総ちゃんは完熟野菜のように、真っ赤になって縮こまりました。
田坂さんは暫くじっとそれを見ていましたが、『ヘタ』と、ぽつんと一言呟きました。
総ちゃんは何がヘタなのか分からず、首を傾げました。
そこへ土方さんがやってきました。土方さんは、田坂さんと八郎さんが来ると必ず総ちゃんのお部屋に用も無いのにやってくるのです。
土方さんを見ると田坂さんは言いました。
『土方さん、もう少し学習したら?』田坂さんの声はとっても冷ややかでした。
『何を?』土方さんは少しむっとして言い返しました。
『つけるとこいつも同じだよ』田坂さんは総ちゃんの胸を指さしていいました。
『大きなお世話だろうっ』土方さんは田坂さんが新撰組の隊士さんなら切腹させてしまおうと思いました。
総ちゃんの前で『ワザがない』と言われては男の沽券(こけん)にかかわります。
『俺の方がゼンゼン上手くって、おまけに手も足も痛くないようにできるよ。何しろお医者さんだからね』
怒りまくる土方さんなんか目もくれず、田坂さんは総ちゃんににこやかに迫ります。
『いよっ』そんな状況などお構いなしに、今日もまた御曹司八郎さんが中庭からやってきました。
総ちゃんはその手に羊羹の包みが無いのを見て、心底ほっとしました。


おあとがよろしいようで♪





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