総ちゃんのシアワセ♪6 総ちゃんは今土方さんにお風呂に入れてもらっています。 田坂さんに『風邪を引くからお風呂は夜寒い時に入っちゃいけないよ』と言われているからです。田坂さんは『島田さんのように力持ちの隊士さんに、テキパキと入れてもらいなさい』と、土方さんの前でけん制することも忘れませんでした。 それでも土方さんは総ちゃんをお風呂に入れると言って聞きません。 総ちゃんは田坂さんの言うことを聞かないと、あとで叱られてしまうのでちょっと困ってしまいましたが、土方さんにお風呂に入れてもらうのも、ほんの少し嬉しいので結局土方さんに言うことを聞いてしまいました。 総ちゃんは晒でぐるぐる巻の左の足を桶の上に乗せて、土方さんに背中を洗ってもらっています。 土方さんは総ちゃんのすべすべの白いお肌をせっせと綺麗にしています。 この背中が夜、闇にうっすら浮かぶと思うと磨くのに邪心はあっても余念はありません。 こういう時の土方さんは新撰組なんてどうでもいいと思ってしまいます。 脱走した隊士さんのひとりやふたり見逃してやってもいいと思う位、寛大なキブンになってしまいます。 総ちゃんはキモチよくて、ついうとうとしてしまいました。 夜は土方さんが寝かしてくれないし、昼間は八郎さんや田坂さんが来るので総ちゃんは睡眠不足なのです。 その時お風呂の外で声がしました。どうやら八郎さんが総ちゃんを探しているようです。 『また来たのかっ。あの野郎』土方さんは思いっきりイヤそうに言いました。 総ちゃんは少し不安になってしまいました。 とうとうお風呂の板戸の向こうに八郎さんがやってきました。 『なんだ、仲良く湯浴みかえ?』八郎さんの声はよく通るので屯所中に響き渡りました。 総ちゃんは恥ずかしくて恥ずかしくて、もうお風呂から出られないと思いました。 『俺も手伝ってやるよ』八郎さんは嬉しそうにお風呂の戸を開けました。 するとそれを待っていたかのように、『入って来んなっ』と言う怒鳴り声と共に、八郎さんめがけて桶が飛んできました。 それを八郎さんは、ひょいっと体を反らせただけでかわしました。 流石は心形刀流の御曹司です。総ちゃんはすごいな、と思いました。 それが顔に出てしまったのでしょう。土方さんが不満そうな顔をしました。 総ちゃんは慌てて顔を隠しましたが、もう土方さんには分かってしまったようです。 『どうせ俺は目録どまりだよ』と急に不機嫌になってしまいました。 そうなのです。土方さんは新撰組副長ですが、剣の腕は大したことないのです。 それでも頭が切れるのでとっても威張っていますが、実は外に出ないのはその為だったのです。そしてそれは土方さんの秘密だったのです。 さっきのうっとりキブンなどとっくにふっとんで、総ちゃんはおろおろしてしまいました。 おあとに続いちゃうようで♪ |