早 蕨 (四)




普段は気にも止めずに過ぎ去る事が、実は改めて知る事実だったということは良くあることだ。
八郎は今、闇というものは刻とともに少しずつその色を濃くしてゆくものなのだと知った。
ただそれが今は神仏を恨みたい程に自分を焦らせる。

暗い中ではむやみに馬は飛ばせない。
おまけに自分には土地勘の無いところだ。
苛立つようなこの速さが精一杯だった。それでも己の足で走るよりはずっと早い。
が、それもすでに限界で、この辺りで馬を乗り捨てなければならないと舌打ちし、ふとやった高い場所からの視線の先に、ちらちらと赤いものが見えた。
それがすぐに松明やら、提灯の灯だと気付いたときに、八郎には微かな希(のぞみ)の糸が繋がれたと思えた。



「橋本家の方々であられるかっ」
馬上から手綱を引いて馬を嘶(いななか)せながら、声高にその灯に向かって叫んだ。
八郎の声は十七歳という年よりも遥かに重く闇に響き、辺りにあったざわめきを一瞬にして鎮めた。
聞いた事の無い声の主に、それにどう応えて良いものか躊躇している風な沈黙を、己の問い掛けへの是と受け止めて、八郎は滑るように馬を飛び降りた。


「橋本家の方とお見受けした」
臆しもせずに、ずんずんとその輪の中に入り込んで、八郎は今一度、念を押すように問いかけた。
手に提灯を持った人影の顔かたちがはっきりと分かる位置まで来ると、その中の大柄なひとりが頷いた。
数は三人いた。

「橋本様の家にお仕えしています」
声は太かった。だが何よりも緊張で低かった。
八郎はそれで宗次郎がまだ見つからないのだと知った。

「この中に源吾という人はいませんか」
それが八郎にとっての唯一の手がかりだった。
「私が源吾です」
すぐに返って来たのは、八郎に応えた声の主だった。
「宗次郎はまだ見つからないのですね」
分かりきった事を、それでも八郎は聞いた。
「まだなのです。もう街道は探しつくしました・・・あとは・・」
源吾は、そこだけがひとつ世界を作っているような、鬱蒼とした雑木林の方へ顔を向けた。


誰もが黙り込んだ中に、耳を澄まさなければ聞き取れぬ程に、微かに流れる水の音が聞こえる。

「・・・源吾さん」
八郎がその不吉な沈黙を、敢えて破るように声を発した。
「宗次郎と別れたのはどの辺りか覚えていますか」
「ここからもう少し行った処です。ですがその辺りはもう探し尽くしました。・・・その先に行く筈もないし」
源吾が徒労だった事を思い出して、溜息をついた。
きっとこの男は宗次郎を一人で帰した事を、深く後悔しているのだ。
「もう一度その辺りから探してみます。どこかに手がかりがあるかもしれない。提灯をひとつ貸して頂きたい」

八郎の顔を見て、無駄だという言葉を源吾は呑みこんだ。
きっとこの若者は自分達が何と言おうと、たとえそれが無駄と承知でもそうするだろう。
八郎の声音には、己の意志を妨げる言葉は何人たりとも受け入れない強さがあった。


「それでは私等はこの先を探しながら行きます」
まだ気がかりのような源吾に頷くと、八郎は踵を返した。
だがそのまま道を進むのではなく、すぐに脇の雑木林に足を向けた。
後ろで源吾が何かを叫んだが、それに振り向くでもなく、八郎の姿は更に濃い闇の中に消え入った。





足元を邪魔する程に伸びた雑草に、捉えられないように気をつけながら、水の音だけを頼りに八郎は前に進む。
手にしている提灯の照らしだす周りだけが、八郎の視界の全てだった。

橋本家への道を辿った筈の宗次郎の姿が街道で見つけることができないのならば、もう後はこの雑木林か更にその先にある川原しか探す処は無い。


八郎にはある危惧があった。
宗次郎は道助に、どうしても今日中に試衛館に戻るのだと言ったという。
だが自分が見送ったとき、近藤も宗次郎自身も今夜は小野路村に泊まり、明日戻る予定にしていた。
それが強引ともいえる行動に出たのは、何かしら理由があったからだ。

多分それは・・・・。
自分が出てくる時に知った、土方の見合いの事を橋本家で聞かされたからなのではないか。
宗次郎はきっとそれに衝撃を受けたのだ。
だから土方の元に一刻も早く戻りたかった。
それは勘だったが、八郎の胸の裡でひとつひとつの欠片が鮮明に組み合わさって、すでに揺ぎ無い確信となっていた。
だとしたら宗次郎は源吾と別れたあと、更に江戸までの道程を歩き始めたのだろう。
ただ土方に逢いたいがその為に。

それが八郎の胸を息苦しい程に攻め立てる。
嫉妬という感情は、最早己の裡にその姿をはっきりと形作り、今八郎からあるあらゆる思考を奪い去ろうとしている。


「畜生っ」

宙を睨んで唸るように叫んだ声に、闇の中で息を殺して木に止まっていた鳥たちが一斉に飛び立った。




確かこの雑木林の向こうにある川は、自分が昼間来た街道と途中で交差するように流れていた。
だとしたら宗次郎は源吾に江戸に向かう姿を見止められないように、この川原を歩いて行ったのかも知れない。
ここを行けばきっと見つけることができる。


足場の悪さに、自分の思うようにはなかなか進まない。
角を取られて丸くなった川原の石に足を滑らせ、あやうく均整を崩しそうになったのを辛うじて持ち直したとき、ふいに今まで一定の規律を持って耳に聞こえて来たものとは違う音がした。
それは明らかに故意によって作られた、辺りの静けさに溶け込むことができない瀬音だった。


「宗次郎っ」

叫び声は鋭かった。
それが誰のものか、あるいは人のものでは無いのか、そんなことはどうでもよかった。
ただ今この僥倖というにはあまりにも心もとない、細い糸を手繰り寄せる為に、八郎はその名を叫ばずにはいられなかった。

声に反応するように、作り出されていた不協な音は止まった。
と、同時にまた其処に同じような静けさが戻った。
それを確かめる間もなく、八郎は音が聞こえていた方に向かって川の中を走り出した。

袴の裾が濡れて纏わり、ともすれば水の流れに足を浚われそうになる。
だが足を止めれば宗次郎は自分の手を離れてきっともう戻らないという、怯えに似た感情だけが今八郎のすべてを支配していた。



宗次郎はすでに知覚というものを何も感じない足を川面に立てたまま、水を弾かせる音と共に自分に向かってくる人影を、ぼんやりと闇の中で見ていた。
耳に聞こえた声が、自分を呼んだものだという意識は宗次郎には無い。
が、その影が手を伸ばし、自分のどこかを掴みかけた寸座、ふいに襲われた本能とも言える恐怖に咄嗟に身を翻した。


「宗次郎っ」

八郎の怒声と一緒に後ろから逃げ送れた手を掴まれて、激しい力で後ろに引かれた。
それから逃れるように渾身の力で腕を振り切ろうともがいたが、その抵抗すら自分を拘束する力は許さない。
更に肩を掴まれ身体を振り向かされた刹那、頬に衝撃が走った。


「宗次郎、俺だ」
肌に残る熱が、痛みよりも先に宗次郎の意識を現(うつつ)に戻した。
夜目にも黒曜石に似た深い色の瞳が、みるみる滲んでゆくのが分かる。

「・・・お金を・・」
「金がどうした」
「探さなくては・・」
「落としたのか」
腕を取ったまま離さず、八郎の声が優しかった。
それに触発されたのか、身体の中で張り詰めていたありとあらゆる神経が、まるで凍えた身体がぬるま湯に浸されたように、ゆっくりと弛緩してゆくのが分かった。
宗次郎の視界を滲ませていたものが、ついにひとつの露となって零れ落ちた。


瞬きもせずに見上げた瞳は八郎を映してはいるが、その像は未だ脳裏にまで届いてはいないのだろう。
「・・・探さなくては」
それが証拠に宗次郎はただ繰り返し同じ事を呟く。


探して見つけなければ土方の元へは戻れない。
戻らなければ土方は自分を置いて何処かへ行ってしまう。

力の入らない身体を、もう一度八郎の腕から捩(よじ)る様にして抜け出そうとした。
それを強引に引き戻しても、宗次郎は今度は抗いはしなかった。

突然膝が力を無くして、水の中に崩れ落ちそうになった身体を慌てて支えてやると、八郎は宗次郎を横抱きにして川原に引きずって行った。



「宗次郎、俺だ。俺が分かるかな?」
水辺から完全に離れて宗次郎を座らせると、八郎はその顔を覗きこんだ。
零れるものの止まらない瞳は、その言葉が届いていないように、ただ大きく見開かれて八郎を見ている。

「川の中に金を落としたのか?」
同じ事を問う八郎の声は水の中で聞いたときよりも、更に穏やかだった。
「江戸に・・・試衛館にひとりで帰るつもりだったのか?」
宗次郎はまだ応えない。
心細さと限界をとおに超えた疲労と寒さとで、その表情は感情というものをどこかに置き忘れたように微塵も動かない。


「・・・転んでしまって・・」

根気強く待って、ようやく八郎の耳に聞こえた声は、気をつけていなければ、そのまま深閑と包み込む冷気に散って消え行きそうに小さかった。

「どこで転んだ」
「雑木林の中で・・」
その問いに答を探すことで、初めて宗次郎に記憶の断片が戻ったようだった。
「・・・けれどもう雑木林の中はずっと探した・・だから川の中に・・」
呟いた宗次郎が、ふいに立ち上がりかけた。
が、それはすぐに前に崩れ、咄嗟に支えた八郎の腕の中に他愛も無く倒れ込んだ。


「宗次郎、もう無理だ。金は明日明るくなったら探せばいい。一緒に探してやるから今日は帰ろう」
だが宗次郎は頑なに首を振った。
「すぐに探さなくては・・明日では間に合わない」
「何が間に合わないというのだ」
「・・・土方さんが」
それは宗次郎の唇から無意識に漏れたものだった。
「土方さんが行ってしまう・・」


縋るような宗次郎の瞳に、八郎は応えなかった。
そんなことは無いと応えを返すことは容易い。
だがそれを八郎はしたくはなかった。


「何故・・、何処に土方さんが行くというのだ」
声音は暗く、宗次郎を問い詰めるように低かった。
「お前の傍らからいなくなると、お前はそう言っているのか」
八郎が宗次郎を見据えた。
「応えろ、宗次郎っ」
腕を鷲掴みにされて激しく身体を揺さぶられても、宗次郎の唇からは何も零れない。

「あの人はきっといつかお前を置いてどこかへ行く。妻を娶るだろう、子も成すだろう、だからお前の傍にいつまでもいられる訳が無い。そんなのは当たり前のことだっ」
どうしてこんなに激しく宗次郎を責めたてるのか、八郎は自分にも分からない。


宗次郎をここまで突飛でも無い行動に追い立てた事情はすぐに察せられた。
多分橋本家で土方の見合い話を聞いたのだろう。
だから宗次郎は一刻も早く試衛館に戻らねば、そこから土方が消えてしまうような錯覚に陥ったに違いない。

しかしその事実こそ、否、目の当たりにしている宗次郎の憔悴ぶりこそが、八郎を激しく苛立たせる。

今宗次郎の瞳に映っているのは確かに自分だ。
しかし宗次郎の見ているのは自分では無い。
それが土方だという事に、怒りが止まらない。

こんな感情は初めてだった。
一度たりとも経験をした事が無い。

憤りだけではない、悔しさも、哀しさも、切なさも遣り切れなさも、全てが混沌として、それが八郎の中で渦を巻いている。
だがもう焔のように逆巻く激情に、八郎自身もそれを鎮める術を知らない。



「当たり前の事だっ」
一気に堰を切った、咆哮のような叫びが闇を震わせた。



八郎の声が四方に砕け、時すらその刻みを止めたような閑寂が再び訪れた。

凍りついたような宗次郎の瞳からは、ただ無機質に零れ落ちるものがある。
見開かれたそれは瞬きもせずに、八郎を映している。
きっと今の宗次郎には己の視界が滲んでいることすら意識の外なのだろう。


「・・・悪かった」
視線を逸らすようにして呟いた八郎の声が、苦しげにくぐもった。

こんなつもりではなかった。
少なくとも、今宗次郎に言う言葉ではなかった筈だ。

「俺が言いすぎた・・」
自分を抑制できずに、当り散らすように宗次郎を責めたててしまった。
八郎はやりきれなさに己を罵倒したい思いだった。


だが横を向いてしまった八郎の手に、躊躇いがちに氷のように冷たい指が触れた。
ゆっくりと半ば怯えに似た感情で視線を戻した八郎に、まだ泣き濡れた瞳そのままで、宗次郎は微かに笑おうとしていた。

「・・・八郎さんは悪くない」
それまで魂の在り処すら不安定に揺れていた宗次郎の静かな声だった。

「きっと八郎さんの言うとおりだ。・・・土方さんがいつまでも傍にいてくれる訳がないんだ・・・」
言ったそばから又ひとつ瞳から零れるものがあった。
それを手の甲で拭うと、宗次郎は先ほどよりもずっとはっきりと笑った。

「いつか土方さんだってお嫁さんを貰って・・・それから子供も生まれて・・きっとそういう風になるんだ・・そんなことずっと前から分かっていたのに・・・」
拭った筈の涙はあとからあとから流れ出る。
それを宗次郎は飽きもせず、同じ動作を繰り返して止めようとする。

「・・・分かっていたのに。・・・へんだ」
必死にとどまらせようとする雫は、そうすればするほど溢れ、ついに宗次郎は下を向いた。



嗚咽を堪えようとするたびに、小刻みにゆれる薄い肩を八郎は見ている。

追い詰めてしまったのは自分だ。
宗次郎が憎かったわけではない。
厭わしかったわけでもない。
ただ土方を激しく追い求める宗次郎の何かが、自分は無性に腹立たしかった。

きっと・・・
きっと追い求めて欲しかったのは自分だったのだ。
宗次郎が瞳に映す相手は、土方ではなく自分でありたかったのだ。

否、気付いていたのかもしれない。
それは友情とも違う、慕わしい感情ともちがう。
この胸の裡に滾る、我が身を焼き尽くすような激しい感情はもう隠す事はできない。

宗次郎が欲しい。
それがたったひとつの真実だった。
垣間見たものは、宗次郎への焦がれるような恋情以外の何ものでもなかった。

自分の心はとっくに宗次郎を求めていたのだ。


「・・・今更」

星も無い天を仰いで呟いた八郎の低い声が、自嘲の響を含んで、川面を渡ってきた夜の風に掻き消された。



どの位そうしていたのか、横を見れば宗次郎はまだ俯いたまま、しゃくりあげるのを堪えている。
顔を伏せた宗次郎の頬に、八郎の手が触れた。
一瞬たじろいで、おずおずと見上げた瞳が自分を映している。

天道の陽の下で、朧な月明かりのその下で、昼に夜に一時たりとも空く間無く、いつもいつも自分だけを映させていたい。
奪いたい唇は、八郎の沈黙に怯えたように少しだけ開いている。

だがこの衝動を自分に許せば、きっと坂道を転がり落ちるように欲情は止められなくなる。
今八郎を辛うじて押し留めているものは、理性とか道理とか言うものではない。
そんな生易しいものではない。

手折って肉体だけを自分のものにすることは容易い。
だがそれで宗次郎の心を失う事に怯えている自分を、八郎はある種驚愕の思いで見ている。
本当に欲しいものは己だけの意志ではどうにもならない。
そんなことすら初めて知った。


「泣くな」
己への枷(かせ)のように苦しい言葉を紡ぎ出して、触れていた指で宗次郎の頬に伝わるものを乱暴に拭ってやると、初めて見開かれていた瞳が瞬いた。
その拍子にもうひとつ、今度は八郎の手に冷たいそれは伝わって零れ落ちた。

「・・・泣いてなどいない」
恥じるように顔を伏せた宗次郎の声は掠れて聞き取りにくい。
「・・・泣いてなど・・いない」

声は更に小さく、最早呟きとも言えぬほどに儚く、雑木林を包む静寂(しじま)に棚引くように呑みこまれた。





昼間はその音すらあるものとは気付かない川のせせらぎも、闇の中にあれば辺りに存在を誇示するように響く。

提灯を掲げて先に行く八郎は遂に立ち止まって、先ほどから遅れがちになる宗次郎を振り向いた。
その気配に、悪い足場に気を取られて俯き加減だった宗次郎も、足を止めて八郎を見上げた。


「どこか痛むのか」
八郎の問いに、宗次郎は黙って首を横に振った。
「隠すな」
「隠してなどいない」
瞬時に帰ってくる応えには、容易に見破ることのできる嘘があった。

八郎は宗次郎に近づくと、薄い肩を掴んだ。
咄嗟の出来事に構えのできていなかった宗次郎の唇から、微かにうめくような声が漏れた。
一瞬顔をしかめたのを、夜目にも八郎は見逃さなかった。

「痛めたのか」
「・・・馬から落ちたときに少し打ったのかもしれない」
「足は?」
大丈夫だと言う前に、八郎はすでに足元に屈みこんでいた。
両方の足首を手で触れると、右足が尋常でなく熱い。
腫れてもいるらしく、太さも違う。


「・・・これで大丈夫などと言うなら俺は怒るぜ」
「少し痛むけれど歩けない事はない・・・それに早く戻らないとみんなに迷惑を掛ける」
「さんざん心配をさせておいて、今更迷惑もないだろう」
辛辣な言葉に、宗次郎が途端に沈黙した。
確かに自分のしたことは取り返しのつかないことだった。
何を言われても返す言葉は無い。

「燃えそうなものを拾ってくるからお前はここにいろ」
「・・燃えそうなもの?」
「これ以上は動けないだろう。火を焚かないと夜は明かせない」
「私なら・・・」
「大丈夫などという言葉は聞かないと言った筈だ」
八郎の声には諌めるというよりも、有無を言わせぬ厳しさがあった。

こうして身体を動かさず、何もせずに立ってる宗次郎の身体は小刻みに震えている。
寒かろう筈が無かった。
自分も宗次郎も身につけているものの半分は、先ほど水に入った時に湿って濡れている。
もっと早くに気付いてやれなかったことを、八郎は悔やんだ。


「とにかくお前はここを動くな。俺はすぐに戻る」
強い口調で言い置いて背を向けた八郎の姿はすぐに闇に消えた。




提灯の小さな灯が揺らめいて小さくなるのを、宗次郎は置いてゆかれる寂しさと共に見ていた。
だがこんなにも心を弱くさせる理由は他にある。



(・・・土方さん)

声に出してその名を呼べば、一度止まったものはきっとまた零れ落ちるだろう。
そうさせない為に、宗次郎は血の滲む程にきつく唇を噛み締めた。









          きりリクの部屋   早蕨(五)