かどわかし (参) 「食べなけゃ、駄目よ。体に力がつかないわ」 軋む音を殺すようにし、梯子を登って来たおきみは、手付かずのままの握り飯を見ると、眉を潜めた。 竹の皮に包まれた握り飯と筒に入った水は、湯屋が忙しくなる日暮れの慌しさに紛れ、おきみが持ってきたものだった。 芝居のはけた小屋の賑わいを、そっくりそのまま持ち込んだような湯屋の喧騒も、四ツ半近く、最後の客を送り出し風呂の火が落とされてからは、物音ひとつ拾えず静まり返っている。 先程、暁八ツ半(午前一時ごろ)の鐘が、遠くで聞こえていた。 「私は大丈夫だ。けれど宗次郎さんの様子がおかしいんだ」 明り取りの窓がひとつあるだけの小屋は、籠らせた熱気を外へ出す事をしないから、じっとしていても不快な汗が滲む。 「さっきからしきりに震えて寒がるんだよ、水を飲ませようとしても、すぐに咽て戻してしまうんだ」 おきみの顔を見たら、いの一番にそれを伝えたかったのか、告げる調子はひどく急(せ)いていた。 その言葉の途中から、おきみも宗次郎の額に手を翳したが、すぐに硬い表情で藤五郎を見上げた。 「ひどい熱だわ・・」 「・・熱・・?」 「宗次郎ちゃん、苦しいの?何処が痛いの?」 他所に声が漏れることを恐れ囁くようではあったが、おきみの必死の呼びかけに、細く長い睫が揺れた。 「水が欲しいの?」 その僅かな兆候を見逃さず、持っていた手拭に竹筒の水を浸すと、おきみはそれで乾いた唇を潤した。 とっくに生ぬるくなっていた水だったが、それでも唇を湿らせた滴(しずく)は、混濁した宗次郎の意識に光の一筋を差したようで、蒼紫の血管(ちくだ)を透かせた瞼がゆっくりと開き、その隙から、空ろな瞳が覗いた。 「いつからこんな様子なの?」 家人が寝静まるのを待って、母屋を抜け出して来たのだろう。 おきみは夜着にしている浴衣の袖を肘の辺りまで捲り上げ、新たに水を浸した手拭で、宗次郎の頬から首筋、胸元を拭ってやりながら、藤五郎に問う。 「おきみさんが握り飯を持って来てくれて、しばらくは、二人して、小さな声で話もしていたんだ。その後、私も知らぬ内に転寝(うたたね)をしてしまったらしくて、・・それが、突然外でした大きな笑い声に起こされた時には、もう息が荒くて、呼びかけにも返事が無くなってしまったんだ・・」 転寝と、藤五郎は云ったが、それはほんの僅かな間の事だったのだろう。 昨日の出来事から此方、ほとんど眠ることの出来なかった体は、水を含んだ綿のように重く疲れ果て、神経の昂ぶりよりも先に根を上げたに相違ない。 湯屋の男湯には、風呂からあがった火照りを鎮めながら、暫し、囲碁、将棋などをして遊ぶ事の出来る二階部屋がある。 この小屋はその部屋の裏手にあるから、何かの話題で一際大きくなった客達の嬌声が、藤五郎の眠りを破ったのだろう。 だが束の間訪れた安息をも許されぬ藤五郎の心を慮ると、おきみは哀れでならない。 宗次郎の肌をそっと仕舞ってやりながら、不意に眸を覆ったものを悟られないよう、おきみは慌てて瞬きした。 「おきみさん」 が、まるでそのおきみの心裡を見透かせたように、後から藤五郎が呼んだ。 その声は、沈んではいたが、此処に来た始めの頃のように、怯えが先立ったものでは無かった。 「このままでは、宗次郎さんが死んでしまう。それにこれ以上、あんたに迷惑は掛けられない、・・夜が明けたら、私は自身番へ行くよ」 「駄目よっ」 「最初から無理な事だったんだよ・・。なのに、私は自分の仕出かした事に目を瞑り、もしやの幸運に縋ろうとした。虫の良すぎる話さ」 揺らめく灯に映る、削げた藤五郎の面には、一生分を、僅か二日に満たぬ時で刻んでしまった深い翳りがあった。 そしてそれは、この精神の苦痛に疲れ果て、悲鳴のように解放を叫んでいた。 「あと一日、一日待って。きっと江戸から逃がしてあげる。その後で、宗次郎ちゃんをお医者さんに診せるわ」 だがおきみはその切願を、藤五郎の心の片隅に、まだほんの少しだけ潜んでいる希(のぞみ)を、再び息づかせるような言葉で摘み取った。 「何故・・」 「藤五郎さんを、好いているからよ」 いらえは、僅かな躊躇いも無く返った。 そのまま、真っ直ぐに向けられた眸に絡め取られたように、藤五郎は息を呑んだ。 ――あの川原で、そして此処に匿われた最初に同じ事を問うた時、おきみは、いらえを曖昧にはぐらかせた。 だが藤五郎は、二度のその中に、おきみの想いの丈が籠められているのを知っていた。 知っていながら、敢えて先に踏み込まずにいたのは、藤五郎のずるさだった。 おきみは、贔屓にしてくれる、客の一人にすぎなかった。 無論、悪い感情は持っていなかった。 むしろ向けられる視線の中に、年頃の娘らしい一途なものがあるのを見る時、得も云えぬ気持の良さに浸ることが出来た。 が、藤五郎にとって、それは役者冥利と云う言葉で簡単に片付けられるものだった。 おきみは大事な贔屓客。 それ以上でも、それ以下でも無かった。 しかし今の立場になった途端、そんなおきみの心根に、藤五郎は都合良く縋ろうとしている。 おきみの気持ちを知りながら、それに知らぬ振りを決めて置きたかったのは、そんな卑怯な自分から目を背けたかったからかもしれない。 だがもう逃げる事は出来なかった。 助太夫を殺めてしまった事からも、おきみの心からも・・・ そして何より、藤五郎は気付いていた。 弱音を吐くごと、おきみの存在が、もう己の核を支える程に、深くなりつつある事を――。 「・・・本当に、そんな事が出来るのだろうか」 俯いて、ぽつりと漏れた声が乾いた。 「逃がしてあげる、きっと・・」 端座した膝に置いた両の拳が震えているのを、潤んだ眸で見詰めながら、おきみは、赤子の頭をかかえるように、藤五郎のそれを、おのれの胸にそっといだいた。 「・・宗次郎さん」 口腔に広がる冷たい刺激に、うっすらと瞼をあけるや、ぼんやり瞳に映ったのは、強張った面持ちで覗き込んでいる、藤五郎の顔だった。 「さっき熱を取る薬を胸に貼ったから、じき楽になる筈だよ」 病人を励まし、布の端に浸した水で、藤五郎は宗次郎の唇の渇きを潤した。 「・・くすり・・?」 「おきみさんが、買ってきてくれたんだ。そうだ、目が覚めたら、この煎じ薬も飲ませるようにと云われていたんだった」 世話を焼かれながら、藤五郎の動きや声の中に、今までには無かった張りがあるように、宗次郎には思えた。 「身体を起こすけれど、大丈夫かい?」 頷いた宗次郎の背と板敷きの間に手を入れ、ゆっくりと、気を配りながら事を運んだつもりでも、やはり熱のある身には結構な負担になったようで、どうにか身体が縦になった途端、小さな吐息が漏れた。 「飲めるかい?」 その宗次郎の上半身を抱えるようして支えると、藤五郎は脇に置いてあった湯呑みを、先程湿らせた唇へあてがった。 「少しずつでいいんだ、少しずつゆっくり、喉を滑らせるようにして飲むんだ」 そう云いながら、藤五郎は量を見て、慎重に湯呑みを傾ける。 昨夜、熱の高い時には僅かな水も受け付けなかった宗次郎だったが、じき夜も明けようと云う頃、おきみの持ってきた貼り薬が功を成してか、今度は咽る事も無く、薬は胃の腑へ収まった。 「・・にがい・・」 「薬だからね、仕方が無いよ」 零れ落ちた正直に、藤五郎が笑った。 その、陽が射したような明るい表情につられ、見上げた蒼い面輪にも笑みが浮かんだが、その時になって初めて宗次郎は、それまで手足の自由を奪っていた縛めが解かれている事に気付いた。 「すまなかったね、痛い思いをさせて」 力無く垂れていた右の手を上げかけた、その僅かな動きを追うように、藤五郎の視線も流れたが、白く華奢な手首にくっきりと残る、赤紫に鬱血した痕を見止めると、痛ましげに眉を寄せた。 「・・大丈夫、・・それよりも・・」 このままこうしている事は出来ないのだと、そう紡ぎかけた唇が、見下ろしている眸に沈む闇の色に捉えられた刹那、言葉に堰し、息を詰めた。 「・・今夜、江戸を発つんだ」 起こした時よりも、更にゆっくりと横たえながら、宗次郎に語りかける藤五郎の顔からも声からも、もう先程の明るい兆しは消えている。 「おきみさんが、全て段取りをつけてくれる。そうして二人して、江戸を逃げるんだ。その時には、宗次郎さんが此処にいる事も分かるようにする。だからもう暫くの間、辛抱して下さい」 「・・おきみさんと・・?」 「私はおきみさんの気持ちを知っていて、それに甘え、結局あの人の先をも摘み取ってしまった、・・人間の屑さ」 そう呟いた語尾には、もう足掻く事すら許されず、暗がりで膝を抱える他無いと知った者の、諦めがあった。 「おきみさんの気持ちを知っていて、甘えたって・・・、ならば藤五郎さんは、おきみさんを好いてはいないのですか?」 だが無言の幕引きを許さなかったのは、意外にも、藤五郎を見詰めている瞳に宿った、深く、強い色だった。 「おきみさんは、自分の事よりも藤五郎さんの事の方がずっと大事だった。だから藤五郎さんを何とか逃がそうとしている。なのに藤五郎さんは、好いてもいないのに、おきみさんと江戸を出ようとしているのですか?」 ――藤五郎に問い質しながら、宗次郎の脳裏には、ひとつの貌が浮かんでいる。 それは、夜叉が人に乗り移ったような貌だった。 しかしその苛烈さを培っていたのは、悲愴なまでの必死だった。 だからその靭さに、自分の動きは封じ込められてしまったのだ。 傾きかけた日が、芒の穂を茜に染め上げ、薙いだ風が一斉にそれを煌かせ、金波銀波のうねりを作った。 その白い光を背に受け、枝を振り下ろすおきみの貌が泣いていると、宗次郎は思った。 あの時、おきみは藤五郎の為に、鬼になったのだ。 そして自分の中にも、その鬼が棲んでいるのを、宗次郎は知っている。 土方が恋しいと、いつも鋭い牙で心の裡を掻き毟る。 昼夜無く、一時の安息もくれず、痛めつける。 だがそれに涙する事も、痛いと、誰かに縋る事も出来ない。 どのように苦しがろうが、辛かろうが、その痛みは、己一人で、息を潜めて遣り過ごさなければならない。 「・・そんなの・・、おきみさんが、可哀想だ・・」 凝視していた視線から、つと瞳を逸らせてしまったのは、責めた言葉が、おきみに重ね合わせた、宗次郎自身の心の吐露がゆえだった。 だが藤五郎は応えずに、明り取りの小さな窓へと視線を向けた。 其処から斜めに差し込む夏の強い光が、端座している影を濃く映す。 「・・私の家は、昔、深川で材木問屋をやっていてね」 重い沈黙の澱(おり)を、静かな声が揺らした。 「店はそう大きなものじゃ無かったが、年季が明けても暫く勤め上げ、ようやく暖簾を分けてもらった父親は、少しずつ商いを太くしていった。そんな或る日、仲間内の寄り合いで、近々大川に掛かる橋の普請があるらしいと聞いた父親は、その為に金をかき集め材木を調達した。・・近くに、手ごわい競争相手が出来て、焦っていたのさ。だが噂は噂に過ぎなかった。しかも間が悪い事に、それから少しして、その材木から小火(ぼや)が出た。・・そうなれば残されたのは、材木を買うに工面した借金だけだ」 硬い面持ちで見上げている宗次郎の視線に気付くと、我に返ったかのように独り語りの声を止め、藤五郎は顔を向けた。 「・・父親と母親の亡骸が大川に浮かんだのは、明日は家を明け渡さなくてはならないと決まった、その日の夕方だった。・・丁度今頃の、夏も終わりかけの頃でね、十になったばかりの私は、岸に上げられた二人の亡骸を前にしながら、人ってのは、まるで、芒野原の向こうにすとんと落ちる陽のように呆気なく終わるものだと、ぼんやりと、そんな事を思ったものさ」 藤五郎の背中から押し寄せる光は、宗次郎の視界を白く霞ませ、その表情を分からなくする。 「それから借金取りの一人に河原崎座・・、今の森田座だよ、そこに売られて・・ああ、あれからもう、十年が経ってしまったんだ。あの時から私には、何だか全てが夢のような気がするんだよ・・。父親と母親に、幾ら呼びかけても応えて貰えなかった事も、震える手で触れた肌の冷たさも、・・・そして、助太夫さんのことも、おきみさんのことも・・。あの時、死んだ両親を前に涙も出なかった川原で、きっと私は、人の心ってものも失くしてしまったんだろうね」 瞬きもせず見詰める瞳に向かって語り終えた時、再び、水の奥底に、音も無く藻が揺れるにも似たしじまが戻った。 だがその直後、藤五郎の裡に、ふと鋭い何かが兆した。 それは抉るように深く、哀しく、切なく、振ればからからと、空しい音がするだけの胸を満たして行く。 そしてその正体を、藤五郎は知っていた。 おきみ、と・・・ その名を口にした時、最初にそれはやって来たのだ。 逃がしてやると、そう云って頭をいだいてくれた人は、暗い闇に縮こまっていた心を、人肌のぬくもりでつつんでくれた。 おきみと・・・ 兆したのは、今一度、その名を声にして叫びたい衝動だった。 しかしそれを、藤五郎はすぐにかなぐり捨てた。 「つまらない事を、聞かせてしまったね」 詫びた声が、小さな笑い声になった。 だがその顔がぎこちないのは、きっと藤五郎の心が泣いているのだと――。 籠もる暑さから逃れるように、又明り取りの窓へと視線を向けてしまった藤五郎を、宗次郎は、熱が水の膜を張る瞳を通して見詰めていた。 「やっぱりあの時、帰さなければ良かったのよ・・」 「おわっちまったもんは、仕方がねぇだろうっ。そんな事で泣いているしまがあったら、ぼうずが行く心当たりのしとつも思い出しやがれっ」 冷やした茶を出しながら、指の先で素早く目の端を拭ったおゆきに、松吉の、荒っぽい声が飛んだ。 女房のおゆきは、過ぎた事を愚痴る女では無い。 否、松吉は、おゆきがそう云う言葉を云ったのを聞いたことが無い。 先の事など一寸先も見えぬ時も、明日どころか、今日の米にすら困った時でも、笑みを絶やすことが無かった。 それが一緒になって初めて、松吉は、おゆきの後悔を聞いた。 そしてそのおゆきの弱気は、松吉に思いもかけぬ焦燥と動揺をもたらした。 宗次郎が行方知らずになって、松吉の胸の裡を覆い尽くしてたのは、不安の塊だけだった。 そう云う時だからこそ、おゆきには、いつもと変わらぬ女房でいて欲しかった。 この、いても立ってもいられない思いを、おゆきだけには受け止めて欲しかった。 おゆきが、いつもどおりに大丈夫と云ってくれれば、それで安堵できる筈だった。 自分がどれ程おゆきに支えられて来たか・・・ 松吉は、今改めて知る思いだった。 「・・なさけねぇ」 己の不甲斐なさをつい零した声に、おゆきが振り向いたが、松吉はそれにそっぽを向くと、煙草盆を引き寄せた。 「世話をかけて、申し訳ない」 云うや否や、この男らしくも無く、出された茶にすぐさま手を出したのは、炎天下を歩き回った身が、一滴の水をも渇望しているからなのだろうと、同じように喉を潤しながら、八郎は傍らの土方を見遣った。 昨日、今日と、昼も夜も無く、町の中をしらみ潰しに歩いて日に焼け、削げた頬が、端正な横顔に、荒々しい精悍さを植えつけている。 「藤五郎のやつ、何処に隠れちまったのか・・」 「どちらにせよ、町から逃げ出すのは夜でなければ無理だろう。昼間では人の目がありすぎる。だがもうそろそろ、あいつも身を隠すのに限界を感じている筈だ。・・辛抱の緒が切れるのは、今夜か、明日か・・」 「今夜だ」 八郎の推量を低く遮り、土方はおゆきの持って来た茶漬けを掻き込んだ。 「どうして分かる」 「勘だ」 あまりに素っ気無く返ったいらえだったが、その強い物言いには、確固とした信念のようなものがあった。 が、垣間見せた自信は、八郎の逆鱗に触れた。 ――八郎の裡に、蔓延るように付いている黒い滲みは、宗次郎が松吉の家を出る時についた嘘に、端を発していた。 その日近藤は、松吉夫婦の元に泊まって来る事を許した。 だが泊まって行けと袖を引いた松吉とおゆきに、今日の内に帰らなければならない用事があるのだと、宗次郎は嘘をついた。 それが、翌朝日野から戻る土方を迎える為だったとは、後で繋ぎ合わせた話の経緯から容易に知れた。 其処まで宗次郎の心を捉えている土方と云う男が、八郎の胸に潜む闇を、嫉妬の焔へと変えて行く。 この男は、どこまで自分を苛立たせるのか――。 傍らの土方に一瞥もくれずして茶漬けを流し込みながら、八郎の眼(まなこ)に、助けを求め、手を伸ばしている宗次郎の姿が見える。 だが闇の中で、宗次郎の瞳は土方だけを映し出している。 其処に、自分の姿は無い。 畜生と、迸る猛りを封じ無言で箸を置くと、八郎は立ち上がった。 同時に、八郎よりも僅に背丈のある土方が並び立った。 それだけで、松吉の家は息苦しい程の狭さに感じる。 「木戸を見張るんですかい?」 自分もその気でいる松吉が、急いで腰を上げた。 「そう云や・・、森田座が芝居の初日を明けていたな」 その座の役者ひとりが殺され、ひとりが下手人として追われている。 「役者のひとり、ふたり、殺されようが殺そうが、どうってこたぁねぇか」 人の命すら、興業の華としてしまう欲の深さ、浅ましさに、呟いた八郎の方頬が、皮肉に歪んだ。 ――炎暑の名残が、闇に澱んだ熱気に籠もり、それが膚に纏わりつき、更に其処からじわりと汗を滲ませる。 弓張り月の尖った先さえ朧に霞む、嫌な夜だった。 |