さくら(壱)




 いつもは橋を渡ると、五条通りをまっすぐ西へ行くのを帰り道にしていた。それがその日、総司が高瀬川沿いに七条まで出ようと思ったのは、水面に触れれば跡形も残さず消える、粉雪の風情に惹かれた気まぐれだった。

 高瀬川は、鴨川の西側に並行して南下し、十条近くでその鴨川に合流する運河である。
 浅瀬を上り下りする高瀬舟を目に、五条通りに架かる橋を渡り左へ折れると、やがて極楽寺の塔頭を囲む長い塀が続く。その真ん中あたりに、塀を寸足らずのように見下ろしている大木がある。その枝を、総司は見上げた。耳に、つい先程田坂の診療所で会った、薬種問屋小川屋左衛門の穏やかな声が蘇る。

 曇天の中、今は寒々しい姿を晒しているそれは桜の木で、季節になれば、花は競うように咲き乱れ、高瀬川を渡る舟荷の上にも淡紅色の花弁を降らせるのだと、小川屋は、その時を楽しんでいるかのような眼差しで教えてくれた。道を変えたのは存外、小川屋の話が頭の片隅にあったのかもしれない。そんな己の単純さを、総司は笑った。その寸座、天に向け伸びる枝の先が、風に揺れた。
「…さくら、か」
 小さく呟いた途端、息は白く濁り、痛い程の冷気が鼻を刺し、喉を刺す。だがその冷たさを覚える間も無く、止まっていた足が、慌てて踏み出された。総司を動かしたのは、通りすがりの者が、ちらりと寄越した視線だった。
 声を聞き止め、怪訝に思ったのだろう。お店者らしき四十がらみの男は、総司と目が合うと、急いで顔を伏せ通り過ぎた。が、そうなればなったで、知らぬ振りをしてくれた気遣いが、余計に恥ずかしい。居たたまれぬ羞恥が背を押し、足が早くなる。突然は、その隙に出来た一瞬だった。
 目の前を、不意に黒い影が覆った。それが人だとは辛うじて判じ得たが、あまりに咄嗟の事で、身を交わすのが精一杯だった。どうにかぶつかる事だけは避けたものの、気付いた時には、相手は雪で湿った土の上に膝をついていた。寺の潜り戸から転げるように出てきたのだから、仕方が無いと云えばそれまでだが、泥濘に座り込んでいる姿を見れば、見下ろしている方に気まずい思いが走る。
「…あの」
 掛けた声に遠慮が先立つのは、そんな後ろめたさからだった。促され、相手は物憂げに顔を上げた。思ったより、若い男だった。袴をつけ、一応の身なりは整えているが、その袴もひどくくたびれている。
「怪我は無かったでしょうか?」
「無い」
 短く応えた調子は無愛想この上なく、云い終えるや立ち上がりかけたが、すぐによろめいた。
「危ないっ」
「要らん」
 思わず差し出した手を邪険に振り払われ、総司は呆気に取られて若者を見た。その総司を他所に、若者は無言で袴についた泥を叩き落している。
 痩せてはいるが、背は総司よりも高い。聡明そうな額の下に、涼しげな眸がある。が、一番印象的なのは、意志の強そうな引き締まった口元だった。それが気難しい風情に映り、近づき難い印象を与えている。
「莫迦な奴らだ」
 そこまでの観察を終えた時、憮然とした声が、凍てた空気を震わせた。相手の姿を脳裏に刻む作業に追われていた総司は、慌てて現に思考を戻した。すると若者は、嘲るような視線を寺の塀の向うへ送っている。
「大寺だと、大層な御託を並べても、所詮莫迦者どもの集まりだ」
 云っている意図を判じ得ず、総司は訝しげな瞳を若者に向けた。
「あんた」
 が、その視線が、今度は総司を捉えた。
「この辺りで一番安い飯屋を知らないか?」
「一番安い?」
「そうだ、飯だけ食わせてくれればいい。他には要らん」
 いらえを求められ、総司は窮した。
 一膳飯屋とて、焼き魚、煮しめくらいの菜はついて来る。ただ飯だけと云う注文を聞いてくれ無い事もなかろうが、飯屋も商い。渋い顔をされるのは目に見えている。困ったと思ったその時、少し先に動くものが見えた。

 目を凝らすと、寺と寺との間に、狭い間口の店があった。風に舞った暖簾に、「そば」と云う文字が見える。そこの戸が開けられ、人が出て来たのだ。どうやら店の者らしく、重く雲の垂れこめた空を恨めしげに見上げている。仕事帰りや、花街に繰り出す客を相手に、商売のかきいれ時を邪魔する氷雨を交じりの雪を気にしているらしい。鬢の薄い初老の男は、寸の間そうしていたが、じき背を丸めて中へ入ってしまった。
 だが肩を落とした主とは裏腹に、総司は其処に標(しるべ)を見つけた。

「蕎麦屋なら、あそこにある」
 安堵した声が弾む。
「蕎麦は駄目だ。すぐに腹が空く。飯が一番いい」
 が、苦肉のいらえは、すぐさま一蹴された。
「でも」
「知らぬならいい。自分で探す」
 にべもない物云いで背を向け掛けた途端、しかしその身は再び大きく揺らいだ。
「危ないっ」
 差し出した手を、若者も、今度は振り払わなかった。
 どうにか支えようとする総司だが、相手が脱力している分、ともすれば一緒に前にのめりそうになる。それを前足に力を入れ踏ん張りながら、若者の様子見れば、ひどく顔色が悪い。
「どこか具合が悪いのでは無いのですか?」
 先程までの不遜とも思える態度に、腹が立たなかったと云えば嘘になる。それでも弱った姿を見れば、そのような感情は何処かに飛んでいた。
「…腹が空いたのだと云ったろう」
 が、弱い声で返ったのは、又も呆れたいらえだった。
「手を離してくれ。立っているよりは座った方が力を使わずに済む」
 若者は総司の手をすり抜けると、もう一度泥濘んだ土の上に腰を下ろしてしまった。
「傘が転がっているぞ」
 しかも立ち尽くしている総司の世話までやく。
 二人の間に、言葉が途切れた。だが奇妙な沈黙はそう長くは続かず、やがて小さな笑い声が、舞う粉雪の間を縫って零れ落ちた。
 若者が訝しげに見上げた。
「何が可笑しい?」
 笑われて、怒っている訳ではなさそうだった。それが証拠に物言いも、声の調子も変わらない。
「貴方が、あまり云いたい事を云うから」
 声にはまだ笑いがある。だが今度こそ怒るかと思ったいらえに、意外にも若者は苦笑を浮かべた。
「必要な事だけを云っているつもりだがな」
「そうかもしれない」
 確かにその通りなのだろう。一理ある云い分に、総司は笑って頷いた。
「では私からも云わせて貰って良いでしょうか?」
「構わない」
「手を貸しますから、立ち上がって貰えませんか?あそこの…」
 総司の視線を追うように、若者のそれも川上に向けられた。
「五条の橋を渡ってそう遠く無い処に、懇意にしている家があります。そこまで歩いて欲しいのです」
「飯屋では無いのか?俺は物もらいではない」
「貴方がお金を置いて行きたければ、置いてゆけばいい」
 束の間、若者は考えるように黙したが、やがてのろのろと立ち上がった。
「分かった、同道しよう」
 頬に吹きつける雪に片目を細め、総司は頷いた。

 この偏屈な相手が、どう云う人物なのか。
 前を行く、ひょうひょうとした背に続きながら総司は、裡に芽生えた興味が、少しずつ色を濃くして行くのを感じていた。






「ほな、京に来はって、うちのご飯が最初ですやろか?」
 問うキヨに、島崎音人(おとね)と名乗った若者は、飯を口に頬張ったまま頷いた。膳の上のものは、汁の跡さえ残さず綺麗に片付いて行く。それを見るキヨは満足げだった。
「が、昨日丸一日と、今日…。二日の間、よく腹が持ったものだな」
 揶揄ともつかぬ物言いは、田坂だった。
「持たぬさ」
 口にあった最後の飯を嚥下すると、茶の入った湯呑に手を伸ばしながら、音人は気の無いいらえを返した。
「だから働く代わりに飯を食べさせろと、寺で談判した」
「…じゃぁ、あの時は」
 総司の脳裏に、寺の潜り戸から放られるように出てきた音人の姿が蘇る。
「仏門に帰依するのかと聞かれたから、冗談ではないと答えた。俺は神仏など信じていない。働く代わりに飯を食わせろと云っただけだ。そうしたら、門前払いだ」
「そこまではっきり云われれば、寺も、はいそうですかと置くわけには行かないだろう」
 呆れた吐息が、田坂の口から漏れた。
 時に相槌を打ち、時に問いながら、田坂はぬかりなく島崎音人と云う人物を探っている。が、音人は、己の人と形(なり)を見極められている事など少しも気づかない。まだ新しい記憶を捲り返し、腹を立てている。
「俺は寺の為に働き、寺はそれに見合う対価の代わりに飯を与える。双方に何の不利益も無い筈だ」
「確かに理屈の上ではそうだろう。だが相手は寺だ。神も仏も信じちゃいないと正面切って云われ、良い顔は出来まい」
「坊主になる気はない」
「形ばかりの殊勝を見せてやれば良かったのさ」
 田坂の声に笑い籠った。音人の一徹すぎる頑固と理屈が、愉快に思えてきたらしい。
「ここの払いは幾らだ?」
「島崎さんっ」
 箸を置き、一息つくまでも無く懐を探り出した音人に、総司の声が飛んだ。寄せられた綺麗な眉根は、田坂やキヨに対する不作法を咎めている。
「生憎、うちは飯屋じゃない」
 その総司の困惑と怒りを、苦笑がてらの声が、やんわり制した。
「だが俺は飯を食わせて貰った。金は払う」
「では取り敢えず、有り金を教えて貰おうか」
 音人は懐から財布を取り出すと、紐を解いた。しかし出て来たのは、一朱銭が十にも足らない。これでは蕎麦一杯も食べる事はでき無い。
「これが全てだ。足りない分は何とでもしてくれ。もう腹に収まったものを返す訳には行かんからな」
 言葉に嘘は無いらしく、田坂に向けた顔は真面目だった。
「確かに、これでは食った飯代にはならないな。では当分此処で働いて貰おうか」
「田坂さんっ」
 総司の声が、今度は田坂に向けられた。だが田坂は応えず続ける。
「風邪が流行っていて、手が足らずに困っている。手伝って貰えれば助かる」
「それでいいのか?」
「構わない。あんたは此処で働く。俺はそれに対して飯と寝る場を提供する。双方に何の不利益もない筈だ」
 己が口にした言葉をそっくりそのまま返されて、音人が苦く笑った。それが案外に人懐こく、この若者の素の顔を映し出した。





「田坂さんっ」
 二度目に呼んだ声が、大きくなった。それに、田坂は漸く足を止め振り向いた。足の速い主を見上げた面輪に、濃い困惑があった。
「島崎さんの事」
「彼が何か?」
「本当に此処で手伝いをして貰うのですか?」
「本当だ。良い拾いものをして来てくれたな」
「拾いものだなんて…」
「拾いものに違い無いだろう?」
 総司の瞳に窘(たしなめ)る色が浮かんだのを見て、田坂の声がからかうようになった。
「田坂さんやキヨさんに、ご迷惑をお掛けする訳には行きません」
「これは俺と島崎さんとの取引だ。君には関係が無い」
「でも…」
 素性も分からぬ人間を押しつけてしまう事が、総司を狼狽させていた。
 筋から云えば、最初に関わった自分が新撰組に引き取るのが本当なのだろう。隊士として実践で使え無くとも、新撰組には賄いや雑役の仕事も有る。恙なく役目を全うすれば、食べるに困る事は無い。その事を伝えようとした時、田坂の方が一瞬早く口を開いた。
「それにあの人は役に立ちそうだしな」
「役に立つ?」
 意味を計りかね、総司は田坂を見詰めた。
「薬草に対しての知識があるようだ。ただの素人とは思えん」
「島崎さんが…、ですか?」
 繰り返した声が、訝しげにくぐもった。

 出会ってから此処まで。時にして僅か一刻。田坂の家に着いてからとて、音人は聞かれた事には応えたが、その中に医術に関するものはひとつも無かった。だとしたら田坂は、何を見、何を聞き、何処でそのような判断を下したのか…。総司の中には不思議さしか無い。
 その種明かしをするように、総司を見る田坂の目が笑った。

「君のおとないの声を聞いて出て行った時、あの人、玄関脇の大葉子や黄連に目を止めていた」
「おおばこや、おうれん?」
「どこにでも見られる雑草だが、共に薬になる。客間まで外廊下を歩いている間にも、庭に植えてある薬草に、さり気なく視線を止めていた」
 田坂の観察は、総司にとって驚きであった。
「じゃぁ島崎さんは…」
「どれ程のものかは判らんが、少なくともそう云うものに興味はあるようだな」
 突然に云われても、総司は俄かには信じがたい。記憶の中で必死にその痕跡を辿ろうとしても、思い当たる節は無い。沈黙してしまった総司に、田坂は苦笑した。
「そんなに真剣に考えなくともいいだろう。食った飯の足りない分を働いて返すって云うのだから、このご時世、得難い程律儀な人間だと思うぜ。丁度人手が足りなくて困っていた処だ。うちでは大いに助かる」
 それは本心らしく、云うや否や田坂は忙しげに踵を返してしまった。
 そしてその広い背を、総司は困惑から抜けきれずに見詰めていた。






「どうした?」
 突然開いた障子に、一瞬、手燭を持っていた手が強張った。
 部屋の灯が見える処まで行って、まだ仕事をしているようだったら、引き返すつもりだった。が、随分前で足を止めたにも関わらず、この部屋の主は、僅かな気配を逃さなかったらしい。
「入れ」
 立ち竦む総司に、短い一言が投げられた。
「仕事が終わってからで良いのです」
「もう終わった」
 にべもないいらえを返すや、土方は又部屋に入ってしまった。障子は開け放たれたままにある。
「早くしろ」
 焦れるような尖り声に、総司は漸く足を踏み出した。


 案の定、土方の仕事はまだ途中だった。文机に向かっている後ろ姿は、当分筆を離しそうにない。邪魔をしてしまった後悔が、総司を襲う。
「話は何だ?」
 だが問う声は、そんな心裡など頓着無い。強引な物言いに促され、総司は口を開いた。
「田坂さんやキヨさんに、迷惑をかけてしまいました」
 語る口調が、思いもかけず早くなった。それは、他人を巻き添えにしてしまった己の軽率さと重さから解放される事を願う、総司の焦りでもあり、又、土方への甘えでもあった。
「迷惑?お前が田坂さんやキヨさんに迷惑をかけるのは、今に始まった事では無いだろう」
「でもっ…」
 そんな事かとばかりの物言いに抗いかけた声が、途中で止まった。
 真摯に聞いて欲しいと願えば願う程、自分の稚拙さを晒すようで言葉を見つけられない。気まずいしじまの中、箱火鉢の上の鉄瓶だけが、湿った音を鳴らす。そう云う時が幾ばくか過ぎた後、とうとう根負けしたように、土方は大きく吐息した。筆を置く仕草に諦めがある。
「話してみろ」
 だが振り返った切れ長の双眸に見詰められた途端、土方を追っていた瞳は慌てて伏せられた。
 自分から切り出しておきながら、いざ向き合えば、今度は仕事を邪魔した念が強く総司を狼狽させているのだろう。子供のころから、他人への配慮が過ぎる想い人だった。土方は腹の裡で、二度目の息をついた。
「何を、迷惑掛けたって?」
 幾分柔らかになった物言いに、細い線の面輪が上げられた。まだ躊躇いはあるものの、見詰める眼差しに背を押され、閉ざしていた唇が紐解かれた。
「知らない人を、田坂さんの家に居候させる事にしてしまったのです」
「知らない人?」
 黙って頤を引いた瞳に、また翳りが差した。
「田坂さんの処に行った帰りに、偶然会った人なのです。寺の潜り戸から出てきた処でぶつかりそうになって…。一番安い飯屋はどこかと聞かれました」
「それで田坂さんの処に連れて行ったのか?」
 土方の声が呆れていた。
「もちろん、どこか他を教えるつもりでした」
「嘘をつけ」
 この男にしては珍しく、声が笑った。

 一番安い飯屋と聞かれ、総司は答えに窮したに違いない。だがそのまま放り出してしまえる気質では無い。思案に暮れた末、総司は田坂の処へ連れて行った。そして経緯は判らぬまでも、相手は当分、田坂の家の厄介になる事になった。大方はそんな処だろうと、土方にとって予想は容易い。
 
「本当なのです。最初は蕎麦ならと云ったのです。でも蕎麦ではすぐに空腹になるから駄目だって…。それで一度だけならと思って、田坂さんの処に行ったのです」
 土方がそんな事を思っているなど知らず、弁明する総司の声は必死だった。
「一度だけの筈が毎日になろうが、それが田坂さんとキヨさんが良いと云ったのなら、お前の気に病む事ではなかろう?それともお前がそうして欲しいと頼み込んだのか?」
「いえ…。田坂さんが、島崎…、あ、島崎音人さんと云うのです、その人。島崎さんに、診療所を手伝って貰う代わりに、食べる処と寝る処を提供すると云ったのです」
「ならば何も問題は無かろう。田坂さんが決めた事だ」
 田坂医師の人を見る目の確かさを、土方は信じている。
「私は、此処に連れてくるつもりでした」
「新撰組に?」
 生真面目に頷く想い人は、時々とんでもない事を云い出す。土方は眉を寄せた。
「腕の立たぬ人間は要らん」
 そうして寸暇も与えず、吐き捨てるように云い切った。驚きに瞳を瞠った総司だったが、土方は憮然と顔を顰めた。
「どうしてそんな事が判るのです?」
「お前が話し始めてから、ただの一度もそいつの技量には触れていない」
 そんな事も気づかなかったのかとばかりの、不機嫌な声だった。総司は暫し唖然と土方を見詰めていたが、時を置かず、口辺に小さな笑みが浮かんだ。
「本当だ」
 やがて綻んだそこから、楽しげな笑い声が漏れた。
 
 確かに、土方の云う通りだった。
 島崎音人が腕の立つ人間ならば、自分はまずその事を土方に話しただろう。多少の興奮を交えて――。それが一言も其方の話題に触れなければ、島崎の腕の程度は推して知るべしと土方が判じて当然だった。気付けなかった自分に呆れながら、それでも総司には可笑しさの方が勝る。

「いい加減に笑い止め」
 忌々しげに叱る声が、心地よく耳に素通りする。それには、田坂に掛けてしまった迷惑で重く心に圧し掛かっていた杞憂を、みるみる霧散するような強さがあった。だがその声の主が、たった今脳裏に刻んだ島崎音人と云う者が何者であるのか、そしてその素性をどのようにして調べようか…。
 目まぐるしく思考を回転させている事を、総司は知らなかった。
 







   



事件簿    さくら(弐)